2017.08.21
「シュタイナー教育」って、何だろう?その2
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.8 2017.08.28
ー高等部 教員よりー
シュタイナー学校を卒業した子ども達の進路はさまざまです。
海外の大学に留学する生徒、国内の大学(いわゆる有名大学も含む)に進学する生徒、美術大学や音楽大学など芸術系に進む生徒、医師や看護師を志し医療系の大学に進む生徒、人間力を養うために演劇研修所に入る生徒、職人になりたくて親方に弟子入りする生徒、もっと広い世界を見たくて世界中を放浪する生徒、自らもシュタイナー学校の先生になりたいと教職をとり教師として戻ってきた生徒……
東大○名、京大○名……といったわかりやすいデータではないですが、実に彼ららしい進路選択だと私は思います。
このとき、大事なのは私たち「大人の在り方」です。
「自由への教育」を謳いながら、子ども達が実際に「真の自由」を獲得したときに、彼らの妨げにならないよう気をつけなければなりません。
シュタイナー学校の子ども達は、低学年の頃から授業の中で「聴く力」を育み、高学年になると「自ら考える力」を養います。年号を暗記してスラスラ答えられるような訓練はしませんが、「江戸幕府はなぜ崩壊したのか?」というような問いには、自分なりの考えを示すことができます。
これはあたかも2020年から変わる大学入試に対応するかのようなカリキュラムですが、私たちはそこだけを目指しているのではありません。
たとえば、あなたのお子さんが12年生になって「世界一の左官職人になりたいから、左官屋に弟子入りしたい」と言ったとき、その選択を応援できますか?
有名大学に余裕で入れる実力があったとしても、です。
そのとき、「とりあえず大学は行っておきなさい」と言ってしまう自信のある方は、他の学校を選択肢に加えた方がよいかもしれません。
子どもがどのような選択をしても、その子の力を信じて応援できるような度量を、私たち大人も身につけておかなければ、「自由への教育」を謳う資格はないのかもしれない、と思います。(もちろん「大学に行きたい」という選択も全力で応援します)
いま時代は目まぐるしく変わっています。終身雇用も神話となりつつあり、有名大学を出ても将来は保障されず、また手に職をつけても、その仕事がこの先もずっとあるとは限りません。30年後、今とは全く異なる価値観が台頭しているかもしれないし、日本という国がどうなっているかもわかりません。
そんな中、私たち大人が子ども達に残してやれるのは、本当の意味での「生きる力」ではないでしょうか。どんな社会、どんな状況でも、自分の選択を信じて、たくましくしなやかに生き抜く力……それこそが「シュタイナー教育の贈り物」だと私は確信しています。
中東などの紛争地域に住む人々は、日頃から価値の変動が少ない「金」を装飾品として身に着けて生活していると聞きます。それは、一たび戦争が起こり、着の身着のままで逃げても、「金」を身に着けることで財産を失わずにすむからだそうです。
またアウシュビッツのホロコーストを最後まで生き延びた人は、どんなに悲惨な状況下でも「心の自由」を失わなかった人達だといいます。
私たちにとっての「金」とは、「教育」ではないでしょうか。「金」は強盗に奪われれば一瞬で失ってしまいます。しかし「教育」は、一度手にしたら、二度と奪われることはありません。時代が変わっても、社会が変わっても、学んだ「教育」と、そこから得た「真の自由」と「生きる力」は誰にも奪うことはできないのです。
そんな「真の自由」を手にすることができる「シュタイナー教育」って、どんな教育なのでしょう。
学年ごとの成長の段階や、それに合わせたカリキュラムについて、詳しく説明すると本が一冊書けてしまいます。
実際にたくさんの本が出ていますが、それらの本を読んでも、実際どんな感じなのか細かい部分はイメージしづらいですよね。
教科書がないのにどうやって勉強するの?エポック授業100分って、最後まで飽きずに授業を受けられるの?感覚・体験を重視する学びって、どういうもの?オイリュトミーって何? ……etc
感覚・体験を重視する「シュタイナー教育」を、文字だけで説明するのはとても難しいのです。
「百聞は一見に如かず」
まずは、来て、見て、体験していただくのが一番です。「シュタイナー教育」を理解するには、とにかく体験していただくよりほか方法がありません。
いくら言葉を尽くしたところで、どうしたって生きた体験には叶いません。
そこで、9月9日(土)に、シュタイナー学園で「入学勉強会」を行います。
1~12年生までのカリキュラムの流れや、実際の授業の雰囲気を垣間見ることができる内容になっています。
来年度、シュタイナー学園への転入学をお考えの親御さんが対象ですが、「まだ迷っている」という親御さんのご参加も歓迎します。(この勉強会に出ていただくことが、次のステップへの切符にもなります)
「シュタイナー教育」で得られる「真の自由」とは何なのか?
ぜひご自身の目で確かめてみてくださいね。
白田 拓子(高等部 教員)