2017.11.06
「暮らしの中で使うモノを、自分の手でつくる」授業
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.17 2017.11.06
小学5年生の時に、バレンタインだ!好きな人にマフラーだ!と、おばあちゃんに聞きながらマフラーを編み始めたものの、どんどん編み目がきつくなって、編み棒がいよいよ入らなくなって断念。という経験がある私からすると、現在シュタイナー学園に通う3年生の娘が、「手の仕事」の授業で自分の帽子を編んでいるのを見るにつけ、奇跡が起こっているとしか思えません。残念ながら不器用さは遺伝してしまうようなので、娘も苦労なく編んだりできるわけではないのですが、「手の仕事」の授業が一番好き!と言うではありませんか。手の仕事の授業以外にもとにかく手をたくさん使う学校なので、自然と培われているものがあるようです。(このあいだは田んぼのエポック授業の一環で、先生から渡された米粒(恐らく1合分)が何粒あるか数える。という宿題が出ました。)
「手の仕事」は週に1度ある専科の授業です
1年生の一番始めの授業は、これからたくさん触れ合う羊毛の原毛を洗うことから始まりました。そしてなんと驚くことに、1年生から棒編みを開始するのです。編み方を練習したあとに編み始めた小人。娘から随時進捗状況を聞いていたので、完成品を見るのをとっても楽しみにしていたのですが、1年生が終わっても家に持って帰ってこないなと思っていたら、2年生になっても小人を編む授業は地道に続いていました。そして持って帰ってきた作品を見てビックリ。帽子をかぶっている小人!
そうやってじっくり一つの作品に向き合う、完成させるというプロセスを辿ることができるのは本当に素敵な時間だなと思うのです。
2年生では自分の笛の袋を編みました。笛が静かに休めるように、色の持つ重さや軽さを感じながら、自分で色を選んで組み合わせていきます。それぞれの子どもが色々な色のグラデーションの笛袋を編んでいて、教室に飾られていたのを見た時は何ともときめいたものです。
3年生では片方の手を中心に使うかぎ編みに移行して、水筒入れや帽子を編んでいます。帽子はところどころ色を変えたり模様を入れたりと、もう母は追いつけない感じです。9歳前後は反抗的になったり不安を感じたりする変わり目の時期なので、物理的に覆うものをつくるということは、この時期の子どもを力づけ、落ち着きをもたらしてくれるんだそう。
思春期に入り手足が重くなって頭でっかちになる7年生くらいの子どもたちは、足を意識するようにと、革でモカシン(アメリカの先住民が履いていた一枚革で作られたスリッポン形式の靴)をつくったり、複数針編みの靴下をつくります。11年生では知性・感情・意志(手足の動き)の調和のための最終段階の学びである、「製本」に取り組むんだそう。
この学園で子どもが学んでいていいなあと思う点は、前回のニュースレターにあったように、成長に沿った学びを積み重ねられること。12年生まで続く「手の仕事」の授業も同様で、どの学年でも成長に合わせたそれぞれの課題に取り組みます。その課題とともに1つ1つじっくり紹介したいところですが、11月18日にシュタイナー学園で開催される「藤野まるまるマルシェ」のタブロイド紙に写真付きで紹介されているので、ご覧になってみてください。わくわくしますよ。
暮らしの中で使うモノを、自分の手でつくる
高学年の授業では工芸や造形も始まるので、木槌やノミを使って木の器をつくったり、鍛金・陶芸で作品をつくる授業なんかもあります。つくることができるということを知っているのは、「使い捨て」や「消費」といったことから距離を置くことができるということで、それってとても羨ましいことだったりします。つくる楽しさも年々増していくのでしょうね。
子どもたちが手の仕事の授業の時に唱える詩
わたしの手あなたの手
手は動く手は働きたい
わたしの手はあなたを助け
あなたの手はみんなを助ける
手は世界の中に入ってゆき
人間のために働く
わたしの手あなたの手
みんなの手で世界が動く世界が働く
この手の仕事で
先日私のお誕生日に娘がプレゼントしてくれたのは「手編みのアームカバー」でした。
なかむらあや(3年保護者)