2018.01.29
手仕事の11年ーー親からみた手の仕事
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.28 2018.1.29
シュタイナー教育では手仕事をとても大切にしています。
1年生からふわふわの羊毛に触れることから始まり、学年が上がると、かぎ針編み、刺繍、棒編みと進み、帽子や靴下、靴も作っていきます。
3年生ぐらいだったでしょうか、ある日子どもが帰ってきて開口一番に
「すごいんだよ○○ちゃんはかぎ針、もう終わったんだよ!!」
と興奮していいました。
親としては「えっあなたは?」と聞いてしまいました。
すると、このくらいできたと指で2,3センチの幅を作りました。
そうか、早くできる=良い事、は全く意識に上らない様、先生は教えてくれているのだな、と思いました。そして出来具合も子どもたちは気にしていない様子でした。
もちろん、子どもの性格もあったと思いますが、他の人と比べる学びではなく、自分の成長を自分で見ることが出来る学校なのだな、とつくづく思いました。
一方、社会に出た大人は、どうしても他の人と比べて、他人も自分も、存在の価値を判断しようとしています。学歴、収入、容姿、コミュニケーション力、行動力など、そしてそれで悩んだり嫉妬したり、いさかいを起こしたり。
今、こどもはもうすぐ12年生ですが、今は自分の出来ること、できない事を受け入れて、それに対してどう自分を成長させられるかという考え方を、身につけている段階なのではとつくづく感じます。
14歳ごろは急に物事が見えてきて、「自分は何でも分かるし知っている」、今風に言ったら中二病的なところから、他者と自分の良いところ、そうでない所、両方あることを見つめ観察し、それを尊重できるようになり、今の段階にたどり着いている様子です。
それを見ていて大人と称される自分の事もそうあらねばと思い、子どもに諭されて気付くこともしばしばです。
こういう成長の段階に、この手仕事が大切な働きをしているのも実感します。
手仕事はさらに工芸の科目へとつながり、木をくりぬいて大きなボウルを作ることもします。自分で木を選んで、柔らかい木、濃い色の木、いいにおいの木、不思議とその子の本質に合った木を選んでいるような気がします。
うちの子の一人は硬い木を選びました。大変なのです。時間がかかるのです。それを解っていてもその木にひかれてしまうのですね。
小さい時から、険しい方の道を選びたがるとはおもっていたのですが。
自分の本質、性格に向き合うための物なのではなかったかなと思いました。
また、高等部になると、機織りをします。経糸に横糸をかけていく。時間のかかる仕事です。古来から、機織りは神聖な物、また世界を織りなすものとされてきた文化が多いです。子どもたちも心の奥で、これから飛び出す社会世界のありかたを感じているかもしれません。
こういう感想は私が感じたもので、先生が意図している物ではないかもしれません。
先生は子供に木を彫る意味など説明しません。心の奥で感じる事が大切なのです。
シュタイナーのカリキュラムではこうして手を使って作ることが他の教科と総合して考えられています。
ぜひ、子どもの作品が展示されている時は、その出来を見るのではなく、それを通して子どもたちが何を学べたのかなと、思いを巡らせてみてください。
そして大人の方にも、手仕事をお勧めします!!
出来は関係ないですからね。
「手を動かすと心が動く」と実感した11年間でした。
11年保護者 吉田まみ