2018.09.18
震災の影響で引っ越し、そして不登校。学園への転入でその子らしくキラキラ輝く。
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.43 2018.9.18
今年の4月に3人のお子さんを転入させたYさん。東日本大震災で被災し、山梨県の都留市移転後、シュタイナー学園在園家庭との出会いをきっかけに、シュタイナー学園への転入を検討したそうです。9年生のお子さんを中心に、転入前後のお話を伺いました。
震災をきっかけに都留市に移住
福島県いわき市に住んでいた時に東日本大震災で被災し、家族で山梨県都留市に移住しました。都留市には親戚等がいたわけではありませんが、都留市で素敵な活動をしている方がいらっしゃることを本で知り、まずは都留市を訪れたのです。都留市は富士山も近く湧き水もあり、自然豊かで渓流釣りもでき、泥田んぼなど自然の中で子どもたちが体験を通して学ぶ、市の催しもあります。都留文科大学の教授と地域の方が一緒に、ムササビの生態や共存するための活動をしていることや、循環型の暮らしを目指し移住している方が多くいることを知り、放射性物質を気にせず子どもたちをのびのびと育てたいと思い都留市に移住することを決めました
移住後娘が不登校に
意気揚々と新しい学校に心弾ませ登校しましたが、うまく馴染むことができませんでした。小4だった娘にとって震災の経験と、福島を離れて身内もいない新しいところでの生活は、親の想像を超える過酷なものになってしまいました。辛い時期は3年半ほど続きましたが、そんな中でも移住仲間や心を寄せてくださる知人の助けもあり、学校ではなく不登校の子どもたちが通う教室に出会い、教室の先生方に助けられ固く閉ざされた心も少しずつ開き、娘らしく過ごすことができるようになってきました。 しかし、本当は学校に行きたいと思っている娘を前に、子どものために移住したのに、子どものためになっているのか悩みました。娘にもみんなと同じような中学校生活を送ってほしい。知人のお友達が学園に通っているということもあり、娘も学園への転入を希望するようになりました。そして4月からは2人の弟も含め、3人が学園にお世話になっています。
クラスにもなじんで学校生活を満喫
うちの娘はわりと元気がいいのですが、うまく入っていけるか心配もありました。しかし、同級生にも恵まれ楽しい日々を送っています。同じ学年に一緒に体験授業や面談を受けた編入生がいたことも心強かったようです。家でも学校の様子をよく話してくれます。以前の学校ですでに習って知っているところもあったようですが、「こんな詳しいところまでは教わってはいない」と感心したり、担任の先生の手によって黒板に描かれる絵のすばらしさに息をのんだり、身体を使って学ぶ楽しさを家に帰ってきて披露してくれることもあります。娘も学びが楽しい、学校が楽しいと話しています。私たちも、ユーモアを交えて話をしてくれる先生方に心が和み、保護者の方々にも温かく迎えられ、親子共々楽しく過ごさせていただいています。夏休みには工芸の授業で作った4つの作品を、福島の「海近くに住んでいる」4人の祖父母に見せていました。部活動も、オーケストラに入ってサックスをはじめ、入学前に観た8年劇に触発され、演劇部にも入りました。学園の各クラブの活動は週に1~2回しか練習日がないので、かけもちで部活に入っている子が多く、娘も2学期からはさらにバスケットボール部にも入りました。他学年の生徒との関わりも楽しく、充実した日々を送っているようです。7年生と5年生の弟ふたりも、今までの学校とは違う環境ですが、楽しい毎日を送っています。通学時間が車で50分、帰りは電車で1時間ほどかけて帰ることもあり、登下校はちょっと大変です。1学期は戸惑いもあったと思いますが、とにかく三人とも楽しんでいるようなので安心しています。やっと子どもたちのために移住した意味ができたように思います。
● ● ● ● ●
姉弟三人そろっての転入は、親御さんも思い切ったことだったと思います。シュタイナー学園ならではの授業も、部活動も心から満喫し、お友達と日々楽しく過ごしている娘さん。いろいろな出会いや体験を経て、学校に通える喜びを味わえて本当によかったですね。
ライター 越野美樹