2018.06.12
学園新入生のお話
校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.36 2018.6.12
シュタイナー学園の1年生は、入学してから約2ヶ月がたちました。元気な男の子がシュタイナー教育になじめるかという質問も耳にする中、1年生の男の子のお母さん、Kさんにお話を伺いました。
進学の選択肢の一つとしてシュタイナー教育を選ぶ
学園に入学する前は都市部に住み、認可保育園に通っていました。家の近くにシュタイナー幼稚園やシュタイナー保育園があってもなかなか接点がなく、家でもシュタイナー教育を意識していませんでした。もともと私の母はシュタイナーがすごく好きで、家中シュタイナーの本だらけ。それでもいろいろな教育がある中にシュタイナー教育もあるよね、という程度で、唯一結婚当時からテレビがなかったというくらいです。
進学にあたり、いろいろな学校の中の一つの選択肢として、シュタイナー教育を選びました。公立でないと夫が反対するだろうと、1ヶ月くらいどうやってプレゼンをしようかと考えたのですが、話してみると意外にも面白がってのってくれました。手始めに近くのシュタイナー学園に足を運んでみると、とても面白そうな教育で、ここで育ったらどんな大人になるのだろうとワクワク。
その後、藤野のシュタイナー学園を訪れたところ、夫と息子が藤野をとても気に入ってしまいました。ただし、保育園のお友達とのおつきあいも深まっていましたし、みんなが通う小学校も知っているので、息子は友達と一緒の学校に行かないことにかなり抵抗を感じている様子でした。
生活と言葉が結びついて学びが昇華される
学園に入って、最初の1ヶ月は文句タラタラでした。学園に入学したら保育園の遊びみたいなことばかり毎日やっていて、なかなか勉強しないというのです。学校の机が前を向いていないのもカルチャーショック。
ゴールデンウィーク後、お弁当が始まったらガラッと気持ちが変わり、漢字を教わった時には目をキラキラ輝かせながら帰って来ました。保育園ではすでにたくさんの文字や計算を習っていたので、「この漢字もう知ってるよ」なんて言われるのではないかとヒヤヒヤでしたが、漢字の由来となる絵を描いて、そこから字ができたのだということを教えてもらい、とても新鮮だったようです。
最近、普段の言葉づかいも変わって来ました。山から雲が湧いて来たのを見て、「山が雲のお布団かぶっている」など、今までとは全く違う言葉が出てきたときには驚きました。学校でふれる、大地、緑、風などの言葉が、普段の生活の実感と結びついているからでしょうか。藤野は日常から木立の間から光の筋がよく見えたり、本当に小人が出て来そうな光景がありますからね。
本物の自然環境だからこその体験
森林公園はあっても、商業施設や公園で時間を過ごすことが多かった都市生活時代。藤野では木に登っても警備員に怒られず、本物の蛇が出てきたりします。1年生はほとんどの子が藤野に住んでいるので、帰ってからも毎日のように遊んでいて、ちょっとした土手に登ったり、バッタをとったり、ノビルを抜いて食べたり。こちらに来るために免許を取り、普段は車で送り迎えですが、たまに寄り道して木苺を食べたりしながらふたりで歩くのも楽しみです。今では、「僕は藤野に来て良かった~」と言いながら走りまわっています。
毎朝靴箱の前で待っていてくれたお世話係
お世話係の6年生が学校生活の楽しさを後押ししてくれました。ゴールデンウィークまで毎朝同じ6年生が玄関で待っていてくれて、担当の1年生のお世話をあれこれしてくれるのです。教えてもらった折り紙やあやとりを、帰ってきてからずっと復習していたり、中休みに校庭で遊ぶ時、走る速さに憧れたり。学校でクラスメート以外にも見知った顔があるのは、とても安心できるようです。帰り道に他の子と「あと何年したらお世話係になれるのか」と指折り数えています。
都市生活時代は、他の子に好きな遊びは?と聞くとYouTubeとか、ゲームと言う子が何人もいてギョエーという感じでしたが、ふたりあやとりをやってくれる友達がいるというのもありがたいことです。
座れる通勤と初めての専業主婦
心配だったのは夫の通勤のこと。夫の勤め先は半蔵門なので、転職の決意をしているのかと思いきや、都内通勤組が結構いるということを聞いていたからか、本人は楽観視していました。結局、四谷で降りて歩くことになり、通勤は座っていけて電車に乗っている時間は1時間10分なので、そんなに疲れることもなく、スムーズです。私も自宅で英語と国語を教える仕事をしていましたが、こちらに来てから初めて専業主婦になりました。物心ついた時から保育園だったので、送り迎えのために半強制的に家にいないといけないという生活も、子どもには新鮮なようです。移住組の多い藤野の学校に来る前はさあどうなるのかと思っていましたが来てしまえば意外とラクチンですね。
藤野の季節の食材とイベントを満喫
物件探しが大変と聞いていたわりに、スルスルとタイミングよく決まりました。藤野の相場よりも高めの賃貸物件のため、以前の家賃とあまり変わりません。仕事を辞めて子どもの食べる量も増えてきたので食費が心配ですが、直売所を活用することで助けられています。何も考えなくても地元のものを買えば季節のものが食べられるというのもありがたいです。典型的な野菜嫌いの子ですが、ビオ市で買った地元の元気な野菜ならバリバリ食べられます。
また、日々の生活が充実していて、藤野から出なくなってしまいました。陶器市などのイベントがあるたびに、あちこちまわって楽しんでいます。藤野は人口は多くないのに、面白いことを考える人が多い、そういう土地は貴重で素晴らしいですね。子どもも、最初のころのように他の土地に行きたいと言わなくなりました。「住めば都」状態ですね。
環境の変化に戸惑いながら、今では藤野の自然を満喫している1年生。週末にはお父さんと虫取り網を持って近所を探索する微笑ましい姿が見られ、大地にしっかり根ざして成長している姿は、とてもたくましく感じます。息子さんと同じくらい藤野を楽しんでいるKさん、どうもありがとうございました。
ライター/越野美樹