2021.03.31
シュタイナー学園の情報の授業~今の私以上の(創造的な)私になる~
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.103 2021.3.31
シュタイナー学園では、早い段階でのコンピュータの授業は行わずに、その学びは10年(高校1年生)から始まります。通常の学校の授業と比べ、遅すぎないのか? 学び方はどう異なるのか? 今回は10年生の授業の内容からお伝えします。
一般の高校で行われている「情報と社会」の授業は、情報社会とは、こういうものだという識者からの概念を与えられる授業、暗記して正解を答えられるようにする授業形式です。しかし、体験重視、芸術重視のシュタイナー教育を受けた子どもたちが、その感性を生かして、インターネットやコンピュータとどのように向き合うか、それをどう教えるか、私は次のように考えてきました。
情報社会を生きるとは、人が必要な情報を伝え合い、理解を促進するような“コミュニケーションをデザイン”しているのだ、という捉え方を大事にしています。従って授業で扱う“情報”についても、ネットで調査したりコンピュータで情報を扱う前に、コミュニケーションツールでもある言葉や文字になる前の情報(五感で感じる情報や体験によって得た情報)を重視します。
それは、「自分」と「他者」、「自分」と「環境」(家族〜社会、建物〜空間、森〜自然環境)という、自分を軸とした関係の中で、他者や環境との間で情報をわかりやすく伝え合う、対話(コミュニケーション)をより良くする方法について学ぶことでもあります。
なぜなら人は、理解したい・理解されたい、愛したい・愛されたい、学び高めたい・学び高めあいたい、などの欲求を持っており、双方のコミュニケーションをより良くすることで、自らの幸福や豊かな社会に貢献できる可能性があるからです。
今までの経験から、メディアやテクノロジーなどのコミュニケーションツールを扱う前に、コミュニケーションや言葉になる前の自身の感情や、その元となる体験が重要だと考えていました。これまでの職務や大学での授業経験などから、様々な体験や社会性があるほど、コミュニケーションをデザインする上で本質的な対話に発展しやすいと感じています。では、 10年生(15-16歳)という少ない社会経験で、どのように情報社会で生き抜く元となる力を醸成することができるか? これは授業を設計する上での大きな課題でした。
今の時代に、ネットと繋がった情報社会において、自分ならではの感性をどのように生かすことができるのか。
言葉、文字、音楽、身体、絵、写真、映像、AR、VR、などコミュニケーションツールを使えることが大事なのか、ツールの使い方が上手い、すごいと言われることを目指すのか。
結論から先にいうと、授業の最終目標は、「自らの感性(興味関心や違和感)を通して、インターネットやパソコンなどのコミュニケーションツールを活用し、自らの課題や社会の課題解決に効果のあるコミュニケーションをデザインする(できる)機会を提供する」ことであり、「インターネットやコンピュータを通して、自分の興味・関心から社会に新しい何かを発信できる『今以上に創造的な私になること』を目指す」です。次回は具体的な授業についてお伝えしたいと思います。
ライター/教員 近清 武