学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2021.09.29

教育

アジアの同僚たち―コロナ禍での学び―

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.116 2021.9.29

シュタイナー学校の教員は常に学び続けています。夏休みは世界各地で様々な研修が行われます。

この夏休み、高等部教員はアジア各国のヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)の同僚たちとの学びの機会を持ちました。8月18日(水)から22日(日)まで、第1回アジア・ヴァルドルフ高等部教員会議がオンラインで開催されたのです。ヨーロッパ発祥のシュタイナー教育ですが、創立100年を過ぎた現在、アジアにも60校を超える学校があります。「アジア」という風土・文脈のなかでのシュタイナー教育。その実践や学びの共有と協働への要求が生まれ、2005年に最初のアジア・ヴァルドルフ教員会議(AWTC)が台湾で行われました。当初は欧米の経験豊かな講師陣がアジアの教員に研修を行なうという主旨でした。しかし、アジアでのシュタイナー教育活動も根付き、ドイツ主導での開催は一定の役割を終えたことが確認されました。

ただ、担任中心に授業を行なう8年生までと異なり、高等部は専門知識をもった多様な教員がクラスに関わります。生徒たちも世界に広く目を向け、交流していくことが大切な年齢。「アジア各国の高等部だけでも継続的に繋がっていこう」ということが、2017年に最後のAWTCとなった中国で話し合われたのです。

ところがその後、世界の状況は一変し、国際会議どころか自国内での交流さえ難しくなりました。そうしたなか、オンラインでの開催を企画したのが、フィリピンのマニラ・シュタイナー学校高等部です。小さな画面、電波状況の不安定さなどの制限もありますし、あくまでも実際に会うことが叶わないときの代替案とは思いつつ、離れていても繋がれるインターネットの恩恵に感謝しました。

正午から午後9時過ぎまで、短いオイリュトミー(※1)、欧米やアジアの教員による基調講演に続き、教科研究・芸術活動の分科会、さらに高等部運営についてのディスカッションというボリュームあるプログラムでした。講師たちはそれぞれ学校や自宅からの講義でしたので、その国の暮らしがかいま見えて興味深いものがありました。素敵なパティオからのボートマ体操(※2)のクラスを受講していたら、突然のスコールに見舞われたり、鶏や犬の鳴き声が絶えず聞こえていたり、小さいお子さんが乱入してきたり、アジアらしい生活感に溢れていて、改めてシュタイナー教育の普遍性、一人ひとりの同僚たちへの親愛の念を感じました。

新型コロナウィルス流行当初から1年半以上、オンライン授業が続いている学校が少なからずあることも知りました。高等部でも3ヶ月近くZoomでの授業を行ないましたので、長期間のオンライン授業の大変さは思いやられます。どのように健康な心と体を育みながら教育を継続していくか、シュタイナー教育の理想を実現しにくい状況のなか、心をこめて取り組まれていることに感動を覚えました。

会議は全て英語で行なわれました。日本の教員たちのなかからボランティア通訳が現れ、高等部に限らず多くの教員が基調講演を聞いたり、芸術活動に参加したりすることができたのは収穫でした。日本のコアチームとして、横のつながりも強まり、遠い未来かもしれませんが、日本主催のアジア高等部会議への展望もおぼろげに見えてきています。

※1 シュタイナー学校の独自科目、音と言葉による身体芸術

※2 シュタイナー学校の体育の授業で行う体操

ライター/教員 浦上裕子