学校法人 シュタイナー学園

12年間の学び

学びへの期待と学ぶ喜び、ファンタジーの世界に浸る

花や動物、風やお日様、天使や妖精に巨人や小人、そして魔法使い…。子どもはまだそんなファンタジーの中に生きています。1年生の学びでは、いたるところで花や虫や雲や石さえも生きている、人間のように活躍する物語が語られます。夢見るように絵を描き、喜びの中で歌を歌い、美しい詩やリズミカルな言葉を唱え、楽しく体や手を動かす中から、文字や計算の学びも生まれてきます。たとえば「フォルメン線描」で活き活きと描かれた線やフォルムが、ひらがなへ、更に先の図形の学びへと発展していきます。外に出かけ、お散歩をすることもあります。葉っぱの色の移ろいや、鳥、ヘビ、虫などの生き物を目にすること、触れることを通して自然に親しむことは4年生以降に始まる動物学の準備となります。

国語/文字の導入

フォルメン線描

少しずつ目覚め、聖と俗、善と悪などの二極を意識し始める

子どもたちは少しずつ、それぞれの個性を発揮し、違いを意識し始めます。そんな時期の子どもたちに語られる物語は動物寓話や聖人伝です。子どもたちは、自分の中にある愚かさや弱さを、動物寓話の中に出てくる賢いキツネや気の弱い兎、勇敢なライオン、あるいは乱暴な狼などの中に見いだして、ある時は驚きと共に、あるときは笑いと共にそれらを受け入れていきます。そして聖人伝では、人間の中にある崇高さに触れて、それを仰ぎ見る気持ちを育んでいきます。習った文字を使い、これらのお話をノートにまとめ、音読にも親しみます。算数の学びでは、かけ算の九九を星にしてノートに色彩豊かに描いたり、イメージ豊かに展開される宿屋のお話から、位取りを学んだりします。一年生からの継続として、お散歩にも出かけ、自然に対し、より意識的に目を向けることを促します。

国語/動物寓話

国語/聖人伝

「自分」という意識の目覚め、手足を使って生きる力が育ち始める

9歳の頃、子どもたちには自立心が芽生え始めます。それまで親や教師に頼っていた子どもたちは、不安や小さな苛立ちをみせながらも、それを乗り越えて世界に順応しようとします。その姿は、楽園に暮らしていた人間が、知恵の実を食べることで楽園を追放され、自分の力で糧を得て生きはじめる旧約聖書の物語と重なります。古事記で語られる米作りの起源もそんな姿の一つですが、子どもたちは実際にも米作りをし、この世界で生きていく力と自信を養います。同時にそこでは、自分の身体を使って長さや重さをはかるところから、共通の単位の必要性を学んでいきます。それはお金の計算という学びにもつながっていきます。子どもたちの目の前に、世界という門が少しずつ開かれていきます。

総合学習

米作り

全体と部分の関係に意識が向き、内面の成長が際立ち始める

この時期になると、子どもたちの内には自我が芽生え、さまざまなことに目覚め始めます。民族の神話には、自我の芽生えや目覚めにつながるエピソードがたくさん含まれています。自我の芽生えは「本当の自分」との出会いの始まりでもあり、今まで慣れ親しんだ仲間たちを含む外側の世界と、自己との分離の始まりでもあります。自己と世界の分離を感じ始めるこの時期に、算数では分数、音楽ではカノンという形の学びが始まります。周囲の世界を観察できるようになった力を使って、「郷土学」では自分たちの住む地域の様子を学びます。「人間と動物学」では、動物園や水族館へ出かけ、動物、生物を実際に観察し、動物たちの多様な姿と、バランスのとれた人間の姿を比較しながら学びます。また、家作りの授業を通して、しっかりとした足場、土台を作ること、柱を立てること、壁や屋根で覆いを作ることを学びます。それは足元への意識を目覚めさせ、まっすぐに立ち、自分の内面と自らをとりまく周囲の世界への目覚めた意識を持つための良い準備となります。

算数/分数の導入

理科/動物学

世界への視野が広がり、肉体と内面が調和する時期を迎える

呼吸や心拍のリズムが整い、手足が伸びやかに調和する5年生。子どもたちは、4年生の「動物学」に続いて、「植物学」で地水火風の力が織りなす環境の中で成長する植物について学びます。古代の歴史では、古代インド~古代ギリシャ、古代中国、縄文・弥生時代の日本など、人々が自然に働きかけて文明の基礎を築いてきた時代を学びます。古代史の学びの一環として、実際にくさび形文字入りの粘土板を作ったり縄文土器を作ったりします。また、古代にまつわる資料が展示されている場所へも出かけます。算数で学び始める小数は、子どもたちが物事をより細かく見、考える力を養います。定規やコンパスを用いずに美しい形をイメージし作画するフリーハンド幾何学は、自分の中に何物にも侵されない美しい規範を作り上げる練習となります。

理科/植物学

社会/古代ギリシャ史

四肢が伸び、骨格が成長し、思春期の入り口に立つ

子どもたちの中で自信が深まると共に、自己主張が強くなり、手足も長く重くなりはじめます。行動範囲も急な広がりをみせ、学びもより理性的な考察へと深まっていきます。歴史で扱うのは、古代ローマ、日本の奈良・平安時代など、国が広がり法を整え始める時代です。日本の歴史の学びのために、毎年この学年では奈良を中心に法隆寺や東大寺などを訪れる「歴史旅行」が行われます。「自分からもっと遠くへ、より複雑なものへ」を意識できるようになったこの時期、地理は日本からアジアの学びへと広がり、理科では、物理(光、音、電気、磁力など)、天文学や鉱物学など、観察と考察を必要とする科目が多くなり、原因と結果の関係に目を向け始めます。幾何学では、より精密な形を描くことで、美しいものに向かう感性と意欲を高めていきます。

理科/地質学

社会/古代ローマ史

感情がより豊かになり、新たな世界観への欲求を持ち始める

思春期を迎える子どもたちは、葛藤しながらも真実に惹かれ、己の探索の道を歩み始めます。純粋な理想を欲する気持ちは、ときに社会への義憤となって表れることもあります。そんな7年生のテーマは、新しい理想を追求するルネッサンスであり、未知の大海原に乗り出し新大陸を発見する大航海の時代です。大人の考えを鵜呑みにはせず、自分たちの理想を求め、恐れを知らず未知の世界へと足を踏み出し始める7年生。この時期、心の中に同居する光と闇は、国語では、物語の奥行きをより深く理解する力となります。数学では、正負の数・文字式や方程式・幾何学の定理など、学びの深まりと共に客観的な思考力を 育んでいきます。日本の歴史の学びは、鎌倉、室町、安土桃山時代を扱いますが、狂言の発表など体を通しての体験が、学びをより深める助けとなります。

国語/平家物語

社会/大航海時代

因果関係や具体・抽象を把握し、自らの思考で世界を捉え始める

8年生は思春期に入り、不安や苛立ちを含みつつも、一方では強い理想を持ち始めます。立ちはだかる困難に立ち向かった英雄・偉人たちに憧れ、自分たちの力で何かを作り出そうとする時期、テーマは「革命」です。骨格が成長し体が重くなるこの時期に、物理では力学を学んで、重力を克服しようとする滑車やてこの作用を体験します。力学の学びは歴史で学ぶ産業革命に繋がり、人間学における筋肉や骨格など自らの体への理解へも結びついていきます。自らの限界にチャレンジしていく野外旅行や、今までの学びの集大成である8年劇は、またひとつ新しい世界へと彼らを導きます。

幾何/プラトン立体

野外旅行

社会への関心が高まり、真理・真実を追求する態度が身につく

9年生は、今、私たちはどんな世界に生きているのか? そこで何が起こっているのか? 世界はどんな仕組みになっているのか? という切実な問いを持ち始めます。そんな問いかけに、社会科では政治、経済、国際関係などの現代社会、そして現代史の学びが応え、理科では地震や火山活動を起こすプレートのはたらきや、台風を起こす気象の仕組み、発電の仕組みなどを学びます。また、理科で学ぶ骨格の姿が数学で学ぶ円錐曲線の姿と重なり合う体験などを通して、生徒たちは、人間や世界の姿とそれを貫いている共通の法則性の予感を抱き始めます。2週間の農業実習では、自分たちが食べるものがどのような営みの中で育てられているのか、実体験を通して学びます。

地理/世界のプレート

幾何/円錐曲線

学びの中で個性が際立ちはじめ、自分はどこから来たのかを問い始める

9年生での「世界がこうなっている」という学びを経て、10年生は、それを成り立たせている根っこはどこにあるのだろう? 私たちはどこから来たのだろう? という根源への問いに向かいます。歴史では、再び古代の学びを深め、地理では、現在の世界の国々とそこに住む人たちの多様な生活文化と、それらを生み出してきた多様な気候条件について学びます。生物学的な観点からは、発生学が新しい世界を開示していきます。また、自分たちの行ったことが世界から正確にフィードバックされるような実習を行います。測量実習では、測量という行為が正確な地図を生み出せるかどうか、職業実習では、自分たちが社会のために役立つものを作り出せるかどうか、という課題に取り組みます。

数学/三角比

美術/プラトン立体の素描

論理的思考に柔軟性が加わり、物事の本質をより広く深く探求する

私は誰なのだろう? どんな人間なのだろう? 自分と向き合い、問いを立て、考えを深めることができるようになるこの時期、11年生の学びでは、アイデンティティへの問いかけという性格を際立たせ、哲学の授業が行なわれます。歴史の学びは、人々が理性と感性、そして個性を発達させた中世から近世へと進み、人間の典型的な姿を捉えていきます。国語では古典の作品に深く触れ、理科では物質を作り出す元素の特徴や、生命を作り出す細胞や遺伝の仕組み、天体が私たちに及ぼす力などについて学びます。生徒たちは、自分たちを作っている様々な要素をマクロからミクロまで総合的に見渡し、思い描くことができる地平に立ちます。3週間の福祉実習は、自分の力を他者のために活かす体験を通して、社会と自分を見つめなおす大きな契機となります。

理科/細胞学

航海実習

多角的に現実を捉えて、自分と世界の関わりを見つけていく

12年生は現実の世界で起こっていることの闇の部分(課題や困難)に目を向ける時期です。その現実から目をそらさず、闇の中に光(希望、願い)を見いだし、どのようにしてそれを具体化させるかを自ら問い、そして行動に移すかが問われます。なぜならそれは、人生を生きることに他ならないからです。
社会科では、現代の社会が抱えている貧富の差、競争、差別、戦争や国同士の葛藤、環境破壊。それらに私たちはどう向きあっていけばよいのか、様々な意見を出し合います。卒業演劇で自分とは異なる心情を持った人物を演じる体験も、進化学で異なる理論を学ぶことも、異なる視点から考える力を養う学びとなります。その上で、それらの課題に対して一人の人としてどのように責任を持ち、行動につなげていくかという課題に向かいます。卒業プロジェクトでは、一人ひとりが自分で選んだテーマを深く掘り下げ、その成果を世界に向けてプレゼンテーションします。

卒業プロジェクト/風力発電

卒業演劇/これまでの学びの統合