2022.03.23
学びのなかでのワクワクする気持ち-それが今の自分を築いてくれたし、糧になっていると思います
卒業生コラム 第21期生 塚本亜里菜さん(後編)
早稲田大学国際教養学部に在籍し、現在オランダのライデン大学に留学中の塚本亜里菜さん。学生として学びながら伝統工芸材料の新たな可能性を探求しているアップサイクル製品ブランド「sAto」を立ち上げるなど、独自の活動をされています。日本とイギリスにルーツを持ち、小学校から藤野のシュタイナー学園で12年間学んだ塚本さん。前編ではシュタイナー教育を受けるなかで感じてきたこと、得たことをお話ししていただきました。後編では12年生の1年間の出来事や、大学進学〜現在に至るまでのお話を伺います。
12年生の1年間と大学受験の準備の両立は大変だったと伺いました。
12年生は学園での課題も多く、内容も深いので、とても大変で忙しくもあったのですが、充実して楽しかった、とも言える1年でした。夏までは卒業演劇があったので、劇を作り上げることに集中し、受験の準備は主に夏休みに集中して取り組みました。わたしはAO入試を受けたので、必要な英語検定試験を受けたり、志望理由書を書いたり、自分が行ってきた学校外課外活動についてまとめたりしていました。10月に試験があり、そこでは英語での記述式の筆記試験がありました。父がイギリス人なので会話は小さい頃から英語でしていたけれど、アカデミックな英語力は会話とはまた違った力が必要なので、父や母にも協力してもらいながら勉強をしました。
大学に合格したら終わり、ではなく、最後まで学園の課題がたくさんあるのですね。
卒業間際まで石彫を仕上げたりしていました(笑)。最後まで学園での学びはとても楽しかったです。どの学びにもプロセスがあり、そのプロセスのなかで手を動かしたり自分に向き合ったりできる時間を楽しみました。
希望の大学に進学されましたが、最初はギャップを感じたりもしましたか?
ずっと「個」として見てもらえること、自分を表現できることが当たり前だったのですが、全然ちがう環境で育ってきた人たちと出会い、最初はギャップを感じることもたくさんありました。進学校から大学に入ってきてという人が多くて、皆どこか感じ方が似ているな…と感じたり、シュタイナー学園で12年間一緒にいたクラスメイトたちは、同じ環境で同じ教育を受けてきたのに、全員全然ちがう一人ひとりだったな、と改めて思ったりもしました。講義を聞いてテスト勉強して、レポート書いて…という大学の学びも最初はなんだかつまらないな…と感じてしまったり。でも少しずつ出会いも広がって、いい友人もできて、そのひとりが今「sAto」というブランドを一緒に行っている友人です。京都出身の子なのですが、失われていく伝統工芸に強い興味を持っていて、伝統文化の継承について考え続けていたわたしと思いが重なる部分が多くあったんです。それで色々と考えたなかで、西陣織などの織物や伝統的な刺しゅうに使われてきた金糸と廃棄されてしまうヨットの帆を材料にバッグやアクセサリーなどのアップサイクル製品を作り販売する「sAto」を立ち上げるところに至りました。
とてもすてきなブランドであり、活動ですね。
金糸はもう作れる職人さんが数人しかいない、このままでは失われてしまう伝統工芸のひとつなんです。デザインや製作を通していろいろな人を巻き込みながら、こういったこのままではなくなっていってしまう技術や使われなくなったモノに新たな可能性を見出していけたらと思っています。今、わたしはオランダに留学中なのでオンラインでミーティングなど重ねて新たな商品の開発などを行っています。
早稲田大学国際教養学部は1年間の留学が必須と聞きました。なぜオランダに留学を決めたのでしょうか?
幼い頃から父の故郷のイギリスに毎年帰っていたのですが、オランダを経由していたので空港は小さい頃から乗り継ぎで何時間も過ごした場所だったんです。でも外には出たことがなくて、いつか行きたいとずっと思っていました。今はオランダのライデン大学でアーバンスタディーズという都市研究の学問を中心に学んでいます。都市には貧困問題や環境問題、再開発などといったたくさんの問題があります。みんなが住みやすい都市をどうデザインしていくかを考える学問です。大学の授業だけでなく実践的なこともしたいと思い、実際に地域に入っていってコミュニティデザインなどを行っている団体でインターンもしています。大学卒業後は、ヨーロッパの大学院でアーバンスタディーズを学びたいと考えています。「sAto」の取り組みも平行して行いながら、日本の伝統工芸材料はもちろん世界の材料も取り入れて事業を広げていきたいです。将来的には藤野になにか恩返しができたらいいなとも思っています。
最後にシュタイナー教育で得たと思うものがあれば教えてください。
学ぶことの喜び、ですかね。学びのなかでのワクワクする気持ちは学園の授業を通して得たことだと思います。 それが今の自分を築いてくれたし、糧になっていると思います。
学ぶことにワクワクする、新しいなにかに出会うのが楽しい。そう語る亜里菜さんのキラキラとした、優しい笑顔がとても印象的でした。恐れず自分を表現する力、他者の表現を認める力、人と繋がっていく力……たくさんの力を持った亜里菜さんの今後の活動がどのような形になってゆくのか、心から楽しみです。
ライター:中村暁野
*塚本亜里菜さんの活動については下のリンクでもご覧いただけます*
【sAto】
オンラインショップ:saaaaato.handcrafted.jp
インスタグラム:https://www.instagram.com/sato_of_marterials/
【早稲田ウィークリー掲載記事】
~金糸×ヨットの帆~ ものづくりを通して人、社会とつながる – 早稲田ウィークリー (waseda.jp)