2020.04.22
学園の学びはいろんな選択肢を持たせてくれています。渡されるのではなく、持たせてくれている
卒業生コラム 第16期卒業生 佐山昌さん(後編)
【佐山昌さん】
シュタイナー学園16期卒業生の佐山昌さんは、インドネシアの国立大学であるインドネシア大学で学位を取得し、現在オーストラリアのクイーンズランド大学でコミュニケーション学を学んでいます。前編ではさまざまな分野への興味を種のように自分の中にたくさん植えつけた、12年間の学校生活について伺いました。後編ではインドネシアでのバックパッカーの旅を経て大学に進学したお話を伺います。
直感で向かったというインドネシアでは、どんな生活をしていたのですか?
2014年の3月にシュタイナー学園を卒業し、インドネシアのジャカルタに家族で行きました。最初の1ヶ月くらいは街をふらふらと見て歩いて、5月からインドネシア大学にあるBIPAコースというインドネシア語の語学学校に通いました。南米やヨーロッパなど世界中からいろいろな人が来ていて、1年間で初級・中級・上級クラスまでのインドネシア語を学べるコースでした。2015年の4月にインドネシア語はほぼ読み書きも話すことも出来るようになり卒業したのですが、その時点でまだ自分が何をしたいのかわからなかったんです。それで、でもとりあえずインドネシア語がわかるんだから、旅をしようと思いました。
インドネシアは多民族国家で島国なので、同じ国でも島ごとに文化も生活もまったくちがう。それを見たかった。バックパックを背負って1年半くらい英語を勉強しながらインドネシア中を旅しました。インドネシア語で英語を教えてもらう学校に通ったり。スラウェシ島のトラジャ地方に行った時、20キロくらい歩いて移動するうち夕方になってしまって。バスもなくなり街に帰る方法がなくなってしまったんです。困ったなあとぼーっとしていたら、近くに人の集まりがあって、ある人がトランプでマジックをやろうとしてうまくできていなかったんです。僕は簡単なマジックが出来たので入っていってやって見せたら盛り上がって。それならと、そこにあった玉でジャグリングをしてみせたらもっと盛り上がり、仲良くなって街まで車で送ってもらえたという。学園で学んだジャグリングに救われました(笑)。
でも冗談ではなく、学園でさまざまな分野のことを深く教えてもらったことが自然と自分の知識となっていて、いろいろな瞬間に出会った人とのコミュニケーションをとるきっかけになっていたようなことはたくさんありました。そんな経験を通して、自分はコミュニケーション学について学びたいなという思いが湧いたので、インドネシアで大学進学をすることにしました。
大学は外国人向けの留学枠ではなく、現地の試験を受けたそうですね。
そうです。インドネシア語で試験をうけ、国立大学であるインドネシア大学社会政治学部コミュニケーション学科に入学しました。コミュニケーション理論からPR、マーケティング、コーチングなどを学んでいます。学部はほぼインドネシア人の中、外国人は僕ひとりで、すべてに前例がなく、手続きからなにから、何倍もの時間と手間がかかって、本当に大変でした。両親はもう帰国していたので、ひとりですべてに奮闘して、つらいこともありました。授業でも最初は『この広告はインドネシアのどういった層をターゲットにしているか、その場合どんな有名人を広告塔にしたらいいか』みたいなことを聞かれても『…知らんよ』という感じで。
インドネシア語はわかっても、一般的な生活文化が全然わからなかったので、1日10時間くらい勉強しても成績が悪かったです(笑)。それでも新しいことを知る喜びはやっぱりあって、最終的に奨学金をもらえるくらい上位の成績をとることができました。僕が専攻したのはデュアルディグリーという2年で学位を取得し、残りの2年は別の大学で学位を取るというコースだったので、2019年からオーストラリアのクイーンズランド大学で大学3年生として同じくコミュニケーション学を学んでいます。今の学校ではもちろん英語なのですが、ルームシェアしている友人はインドネシア人なので、生活の6割英語4割インドネシア語という感じです。
今後、どのような道に進まれたいと思っているのでしょうか?
大きくいうと、コミュニケーション能力を生かして人の助けになるようなことをしたい、と思っています。オーストラリアなのか、インドネシアなのか、日本なのかということも含めて、自分には選択肢と可能性がたくさんあると思うので、じっくりと考えていきたいです。
最後にシュタイナー学園での学びで得たと思うことはありますか?
学園にいた時に広範囲にいろいろなことを学び、いろいろなことを好きになれたことが、自分の興味や可能性の幅を広げてくれて今があると思っています。自分がやりたいと思ったことはいくらでも挑戦させてくれて、何度でも失敗できて、それをバックアップしてくれる先生方や保護者の方がいる。そんな環境の中で好きなことがたくさん見つかりました。卒業するまでに『何かひとつ』が見つからなくても全然焦ることはないと思います。学園の学びはいろんな選択肢を持たせてくれています。渡されるのではなく、持たせてくれている。だからこそ、選択肢も可能性も自分次第でいくらでも広がっているのだと思います。
「何かひとつ」がすぐに見つからなくても焦らなくていいんだ、という言葉がとても印象に残った佐山さんのお話でした。そう思えるのは、きっと自分自身への信頼と自信が自然に育まれているから。だからこそ何かに向かって挑戦していくこともできるのだと思いました。佐山さんの今後の活躍を楽しみにしています。
ライター/中村暁野