学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.11.09

教育

自由な発想が生きる体育

〜新任体育教員から見たシュタイナー学園らしさ〜

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.144 2022.11.9

私は昨年度から初等部と高等部の体育を担当しています。 シュタイナー学園に来るまでは、公立中学で体育の講師をしていました。今日は、学園の高等部に来て気づいたことや感じたことをお伝えしたいと思います。
 
はじめて高等部の校舎に来たとき、校庭のトラックのすぐ脇にある大きな桜の木に驚きました。「さて、どうやってここで体育の授業を行おうか……」と悩みました。しかし、高等部の生徒は桜の木を上手に生かし、例えば鬼ごっこではフェイントに使ったり、ベースボールではボールをコントロールして当てないようにしたりと、工夫しながら運動していました。
 
部活動の朝練習ということではなくても、朝早く登校して体育館で自主練習する生徒や、 休み時間に外へ出てサッカーやアルティメットなどを楽しむ姿もよく見られます。体育の授業前には体育館で、こっちでバスケ、あっちでバレー、そっちでバドミントン……という風に場所を工夫して様々なスポーツが行われています。また、私はバスケットボール部の担当をしていますが部活動での生徒の様子を見ていると「本当にバスケが好きなんだな」と感じます。強制的・排他的にならず好む人が集まり、活動しています。
 
「余暇を楽しむ」が語源である“スポーツ”は、誰もが自由に行う権利があります。体育の授業でも、生徒たちが将来、豊かなスポーツライフを送ることを目指しています。伸び伸びと体を動かしたり、場所やあるもの、人数などを工夫して運動している生徒たちの姿に驚きながらも、その力を大切に、伸ばしていきたいです。
 
シュタイナー学園の生徒と関わっていて感じることは、近代スポーツに対する固定概念があまりないということです。これはひとつの要因としてテレビやインターネットなどのデジタルメディアにふれる時間の少なさがあると考えています。固定概念が強いと既存のルールをそのまま行ったり、道具をそのまま使おうとします。それは将来スポーツをするときに、ルールが全部わかる人だけ、道具を使える人だけ、場所を使える人だけがやるということになり、スポーツをする人、しない人が二極化されてしまう恐れがあります。 
 
固定概念が少ないため、生徒は自分たちが受け取ったスポーツに対する「やりづらさ」や「発見」から、「自分たちに合うルール」などを考えています。それは授業内での会話や、授業後に書かせている「体育実技振り返りシート」の記述内容からも伝わります。生徒の純粋な疑問、鋭い視点や発想は興味深く、こちらも授業を行っていて面白いです。そのため、とくに「振り返りシート」を書く時間、書かれた内容を、私たち教員は大事にしています。
 
現在、そして今後の体育授業の課題として、猛暑や大雨などの異常気象と授業時間が重なった時に、授業をどのように行うかということがあります。悪天候だからできない、ということですぐに決断するのではなく、そこも生徒と共に考え学びにしていく必要があると考えています。 
 
高等部の体育では今年度から、複学年で男女別だった授業を学年ごとの男女合同の授業に変更したり、12年生では自分たちで地域ごとの伝統スポーツを調べて教えあう活動をするなど、新たな試みをはじめています。それらの試みや授業の振り返りを行いながら、これからも生徒たちと深く学べるようにしていきます。 
 
ライター/教員 木原 希