2022.12.07
自然の中で自分を試す 〜8年生サバイバルキャンプ〜
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.146 2022.12.7
思春期まっただ中の8年生(中学2年生)。この頃になると考える力や俯瞰して見る力がついてきて、大人に頼らず自分の考えを試したいと思うようになります。そのためシュタイナー学園では、毎年この時期に「サバイバルキャンプ」という、ある一定の枠はありながらもその中で存分に力を発揮できるような野外活動を行います。
今回はビバーク(テントは無く、タープのみで屋根をつくる野外生活)を10月末に3日間、西丹沢で体験してきました。事前の話し合いでは不安感を抱きつつ、3日分の食事を決めているときは、どこかワクワクしている様子でした。
バスの車窓から見える大きな富士山に皆大興奮。しかし「富士山を眺めながらビバークなんて最高だなぁ」と気分が高揚していたのも束の間、目的地へ進むガイドの戸高さんは、山の奥へ奥へと歩を進めます。60ℓのリュックを背負って進む8年生。休憩場所では土で汚れることも気にせずリュックを枕に寝そべる姿もありました。リュックが壊れたり靴底が剥がれたり等のハプニングがありながらも、無事到着した初日の野営地は深い樹木と川に囲まれた大自然。「ここで寝るのか」と皆驚きながらも身を引き締め、グループごとに寝床探しに駆け回りました。
タープ張りの遅れたグループには他のグループが応援に来て、皆で屋根を完成させました。タープ張りでは個々の力が発揮され、木登りが得意だったり、石に紐を巻き付けて木の枝と枝の間に投げ込む命中力だったり、寝床を柔らかくするために土を掘って平らにしたり、とにかく試行錯誤でしたがそれぞれ持つ力を出し合いました。
自由時間にはこの大自然の中でかくれんぼをしました。1時間探してもあと2人が見つからない。後で隠れていた場所に案内してもらうと、上から少し覗くだけでは分からない、川と道の間の傾斜に生えた大きな古い木の根っこのあたりに、2人がちょうど座ることができる隙間がありました。よくその場所を見つけ出して1時間隠れていたものだと、仰天しました。
気づくとあたりはかなり暗くなっていました。急いで焚き火用の枝を拾い集め、夕飯の準備にうつります。焚き火を安定して燃やすことが一苦労。それぞれが、うちわであおいだり、杉を順序良く入れたり、小枝を入れたり、大変な作業でしたが、最終的に火を囲んで食べる夕飯やマシュマロは絶品でした。そのあと星空を見に丘の上へ。満点の星空の下、星とは全く関係のない話で盛り上がるのも8年生らしい。流れ星が偶然みえたときは歓声があがりました。
2日目。予報は雨でしたが午前中は持ちこたえ、過ごしやすい気温で周遊登山をしました。普段は遠くから眺める山の景色の中にいま自分たちがいると思うと、不思議な感覚です。上は紅葉の屋根、下は紅葉の絨毯という絶景に後押しされながらも、辛い上り坂には少しずつ弱音も出てきます。歌を歌ったり途中の休憩でおやつを食べたりして、2時間以上歩いてたどり着いたキャンプ場。
タープ張りの上達に感心しながら各グループをまわっていると興味深いことを発見。グループの配置が初日とほぼ同じでした。自由に場所を決めてよいのにこの現象。動物の本能のようなものなのでしょうか。
急遽予定変更になって中日に温泉へ。これは嬉しい変更でした。思っている以上に溜まった疲れを癒し、残り1日半やり切るぞ、と気持ちを高めることができました。
夜中、雨が強く降り出し、タープの横から雨が入り込みます。雨で寒く、電気も限られているため暗く、そして何より眠い。みんなでリュックや寝袋が濡れないように工夫を凝らし協力して寝床を確保しました。今思い返すと、このまさにサバイバルな状況はそれぞれの意志を強めた経験でした。
3日目の朝、朝日に照らされる富士山を期待して見に行くとあいにくの霧。しかし2羽の美しい鳥が食事をとる場面に遭遇しました。湖に頭を潜らせてエサを捕獲する姿は、人間からはお尻しか見えず愛くるしい姿でした。その鳥に上着を嚙まれそうになったことも良い学びです。人間に慣れているその鳥は、餌を貰えると勘違いしたのかもしれません。
3日間で体力、想像力、応用力など様々な力を使い、帰りの車中は皆熟睡…と思っていましたが楽しそうな話し声。大きなケガもなく無事に帰ることができました。
ライター/教員 木原 希