2023.04.26
子どもの成長をよりよく見守るために 〜ドイツのシュタイナー学校の学童保育〜
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.156 2023.4.26
この春、学園の学童保育「キンダーハウス」職員の山野辺智子さんが、ドイツのベルリンシュタイナー学校(Rudolf Steiner Schule Berlin)へ見学に行きました。海外の学校で感じたことを伺いました。
今回の渡航は、2019年のシュタイナー教育100周年をきっかけに日本とドイツの学校で交流しようという話が持ち上がり、コロナ禍を経てようやく実現したものです。昨年秋にベルリンシュタイナー学校から学童保育を担当している先生が藤野を訪れ、3 月に今度は私がベルリンへ行きました。
ベルリンシュタイナー学校はシュタイナー教育の草創期に誕生した歴史ある学校です。街の中心部から電車で30〜40 分、周りは主に住宅地で森もあります。同じ敷地に0歳から入れる保育園から高等部までがあり、約800人の子どもと約180人の教職員がいます。1クラスの定員は30名、1学年に2クラスあります。
敷地内には学年に応じた校舎のほか、この学校の特色であるオーケストラやサーカスができる体育館、劇場など、大きさもつくりもさまざまな建物が分散して建っています。あちこちに小さな広場や変化に富んだ道があり、学童の部屋も何カ所かにありました。
担任の仕組みは日本と違い、1クラスに担任と副担任の2人の先生がいます。副担任は学童の保育士でもあり、主に子どものケアを担当します。学びの面を担任が、生活の面を副担任が担うことで、担任は授業に専念できます。さらに保護者と連携することで子どもたちの成長をよりよく見守っていくことができます。
私は主に4年生の副担任の先生と行動を共にしました。副担任は、授業中は教室で何か困っている生徒がいたら声をかけてサポートし、放課後は学童の先生として子どもたちと過ごします。学童の部屋は複数あり、担当する先生によって雰囲気が違います。その先生が好きな手仕事の道具が充実していたり、鳥好きな先生の教室には鳥がいたり、自分の犬と学校に来たり、という具合です。
子どもの遊びは日本と変わりません。男の子たちは闘いごっこが好きだし、小さな小屋でのごっこ遊びに夢中の子もいれば、鉄棒やブランコ、ボール遊びをする子もいます。小鳥やロバ、羊などの動物も学校で飼育し、子どもたちが世話をすることができます。ロバを連れて住宅街を散歩することもありました。
日本と違いグラウンドはなく、校内には木が繁り小道があります。木道もあれば石畳もあり、くねくね凸凹していて、そこで一輪車を楽しむ子もいました。小さな広場も土だったり木製チップだったり、ボールが使えるようにしてあったり。平らでもなく、斜面を走ってきて砂場に飛び込むのも楽しそうでした。変化に富んだ環境なので子どもは退屈しません。子どもたちが想像を働かせる材料がたくさんあります。死角になる場所もありますが、複数の大人が見守っていました。
こうした環境の違いも印象的ですが、全体的にシステムがしっかりしていると感じました。もちろん最初から出来上がっていたわけではなく、必要があればそれに応えるために仕組みをつくり環境を整えてきたそうです。
担任と副担任という仕組みは保護者とのコミュニケーションもとりやすく、うまく機能しているそうです。また、学童は本来4年生までですが、お世話になった4年副担任の先生は「この子たちには 5 年生まで必要だと思うから」と、もう1年学童を延長すると言っていました。
子どもにとって何が必要かを考え、そのためには変化もしていく。シュタイナー教育という共通の理念を持ちつつ、先生一人ひとりが大事だと思うことを大切にしていました。ドイツと日本では学校の環境も社会の仕組みも違いますが、現地で感じたことを大切に、今後に活かすことができたらと思います。
ライター/保護者 木村未来