学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.09.13

教育

喜びと共に記憶に残る授業 ~算数の体験授業より~

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.166 2023.9.13

「全国から教育関係者が集い知見を共有する「未来の先生フォーラム」にて、シュタイナー学園で算数・数学を教える増渕智先生の体験授業が行われました。授業を振り返りつつ、増渕先生が授業で大切にしていることを伺いました。


今回の授業では、小学生で学ぶかけ算、公約数・公倍数と、それらをつなげた幾何学を取り上げました。低学年のかけ算は、動物の出てくるお話をしました。「森にリスがいてね、2つごとに石を渡って跳ねているよ」。そのリスの動きを、数を数えながら手を叩くという動作でやってみます。リスが石を踏む2、4、6…で手を叩き30まで数えます。
 
次に「ウサギは3つごとに跳ぶよ」と語り3、6、9…で手を叩き30まで数えます。その次には、まるく輪になって立つ10人に石になってもらい、リスがとんで石の人たちとハイタッチします。2、4、6…の石の人とハイタッチします。10以上の数えは、12番目は2番の石が、14番目は4番目の人が担当します。つまり一の位の数に対応させていきます。同様に、ウサギは3つごとの石とタッチします。すると、そこに不思議な図形があらわれて来ます。私たちはそれを「かけ算の星」と呼んでいます。
 
その次は4年生くらいの内容です。3つのグループに分かれて手を叩きます。2ずつ数えるグループ、3ずつ、4ずつ、の各グループです。手足や膝など、体の部位を使って数えます。すると、一見バラバラに数えが進行するようでいても、12や24では全員の手が揃って鳴ります。大人はすぐそれらは2、3、4の公倍数だと気づくかもしれません。でも子どもたちは「2と3と4のグループが出会えた!」という喜びとして受け止めます。子どもは3つの数が出会う、ということを体験し、それが後に公倍数の学びにつながっていきます。「公倍数とは」と最初から教えずとも、体験を通して喜びと共に記憶します。

その次は6年生の内容です。12人で円を作り、まず隣の人と手を繋いでもらいました。次に自分から2人目の人(左右両方向で数え)と繋ぐ。次は自分から3人目…数が増えるにつれ混乱し始め、最後に6人目同士で手を繋ぐ頃にはワイワイ騒ぎながら手を繋ぎます。大人でも腕がこんがらがって思わず笑いが起きました。
 
その後、同じことを紙の上で行います。12の点を等間隔に円周上に配置し、隣同士の点を結ぶ。次に2つ目の点同士、次に3つ目…と直線で点を結ぶと紙の上に六角形や四角形が現れます。見つけた法則を参加者間でシェアし、今度は式で表しました。そこにも公倍数、公約数の法則が再び登場します。大人はすでに知っている公倍数・公約数の学びですが、動きを体験し、作図し、法則を見つけ、式で表す。わからないことがあったらまた皆で体を動かしてみる。すると新しい気づきがあり、皆で「ああ!」と感動する。初めて会った参加者同士も授業が終わる頃には会話が弾み、「算数は机に向かって紙の上でするものだと思っていたので、目から鱗が落ちる思いでした」といった感想もいただきました。
 
9月の青山学院大学での講座では、「立体」を扱います。一般的には数学とそれぞれの教科とのつながりが見えにくく感じるかもしれません。しかしシュタイナー教育では、歴史も物理も数学も音楽も、各教科は全てつながりを持っている、ということを大切にしています。例えば、立体は自然界に様々に存在します。その美しさや不思議に触れることができます。
 
現代はさまざまな場面で、自分と他者、自分と世界が分断されてしまう危険性があるように思います。だからこそ「つながり」を見直すことが求められているのでしょう。そのためには学校で子どもたちが一緒に何かを体験し感動することや、自分の手を動かして学ぶといったことはとても大切だと思います。大人の方々にもぜひシュタイナー学校の授業を体験し、ともに学ぶ喜びを感じていただけたらと思います。

お話/教員 増渕 智