学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.02.21

保護者

発達が気になる子も一緒に学ぶ シュタイナー教育 自主活動クラス「ことりさん」に通って

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.177 2024.2.21

重度の知的障がいと自閉症を抱える9歳の娘が “発達が気になる子も一緒に学ぶ” 自主活動クラス「ことりさん」に通いはじめて、3年が経とうとしています。現在、娘は平日は地域の特別支援学校に通っており、月に1、2回土曜日に行われるクラスを心待ちにしています。

わたしたち家族とシュタイナー教育の出会いは、幼児期に遡ります。発達がのんびりな娘が通える園探しが難しく、親としても初めての子育てで八方塞がり状態。そんな時に、藤野のシュタイナー園「とねりこ子どもの家」の存在を知りました。面談時、不安そうな表情をしていた私に対して先生が静かに一言、「○○ちゃん(娘の名前)の大好きなところをたくさん教えてください」と。その時のあたたかな空間を私は生涯忘れることはないでしょう。親自身が大きな安心感に包まれる体験をして、娘にとって何が一番大切かが分かったような気がしています。

卒園と同時に、2021年より発達が気になる子、成長に凸凹がある子のための自主活動クラス「ことりさん」がスタート。娘ももちろん通うことになりました。

初めて授業が行われた日、クラスの扉をくぐる娘の後ろ姿は輝いて見えました。扉の先にあるまだ見ぬ世界、叡智、学びへの希望…発語が乏しく、言葉での意思疎通やコミニュケーションはまだ難しい状態の娘ですが、その背中は勇気と自信に満ちていました。その背中を見て、言葉で表現するのはとても難しいのですが、親の私よりもはるかに深く“世界の何か深淵なもの”をしっかりと理解しているのだろうと感じました。

授業は先生方が丁寧に作ってくださる空間の中で、エポックやフォルメン、音楽などが行われています。授業中は親は外で待っていますが、終わった後は瞳が輝き、自分自身の中にしっかりと入り、生命力に溢れた姿で出てきます。

さまざまな感覚過敏を持つ娘ですが、手足と心をたくさん動かし、美しさと神聖さを体感する授業によって過敏がやわらぎ、段々と感覚が統合されてきているように感じています。音楽の中で歌ってくださっている曲はとくにお気に入りで、家で私が口ずさむとしっかりと言葉にして一緒に歌ってくれるようになりました。日常生活も落ち着いており、体と心への安心感の体験の積み重ねの大切さを実感。最近は目を合わせてのコミニュケーションも増え、世界に対する信頼感も確実に育まれているように思います。

ことりさんがある日は、親の私も静かで穏やかな気持ちになります。先生方、保護者のみなさん、クラスに気持ちを寄せてくださる方々の愛情が根底に流れているのを感じるからです。こういった “つながり” を感じられることが、どのような境遇の育児であっても必要です。娘とクラスのおかげで、感謝は湧いて出てくるものだということと、当たり前ですが “すべての存在は尊く美しい” ことを知りました。

ことりさんに通って3年。クラスの子どもたちは会うたびにすくすく成長しています。その姿を見ると「わたしはこれだけ成長したよ。それで、あなたはどう?」と問いかけられているような気がします。これからもクラスで培った大切なものと共に、親子でゆっくりと成長していきたいと思っています。

ライター/保護者 林亜沙美

※「ことりさん」は学校が主催する集まりではなく、有志のメンバーによる自主的な活動です。