学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2025.02.05

教育

高等部生徒たちの実習報告会(2)〜福祉実習〜

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.202 2025.2.5

高等部9年生から11年生で体験するさまざまな実習は、シュタイナー学園の特色のひとつです。な11年生は、3週間と最も期間の長い福祉実習を行います。北海道や広島、長野で長期滞在するケースもあり、仲間と離れひとりで未知の場所へ働きに行くという生徒もいました。

実習先は、障がいをもつ方々の施設を中心に選ばれていますが、乳児院、高齢者施設に行く生徒もいます。初めてこうした人と触れ合った生徒たちは、「最初は緊張した」と口を揃えて言います。しかし「言葉ではないコミュニケーションができることがわかった」「自分の不安は、未知だったからだとわかった」といった感想から伺えるように、3週間を通して大きな変化と発見があったようです。
 
障がいのある人とともにお菓子作りをした生徒は「自分で作るときは効率良く、と考えていたけれど、どうしたら利用者さんが楽しく達成感を感じられるかな、と考えるようになった」と、相手を思いやる視点を持てたと語りました。どの施設でも、生徒たちはスタッフの方が利用者への思いやりと尊敬の気持ちを持っていることに気づき、相手の話を聴くことや、ともに考えることの大切さを感じていました。
 
また、障がいには目に見えないものも多いことを知ったという生徒や、少しの工夫で出来ることがあると知り、「たとえば視界が半分しかない人に話しかけるとき、必ず見えている側から話しかける。自分にとっては小さなことも、相手には大きな効果があるのだとわかった」という感想を持った生徒もいました。
 
高齢者施設で実習した生徒は、実習中に利用者の死を経験しました。辛い気持ちを味わうことになりましたが、スタッフさんたちと思い出を語りあって亡くなった方を送り出すことで、あたたかさを感じられたのだそうです。

実習先は違っても、多くの生徒から、「相手を理解しようとすることで自分も受け入れてもらえる」「知らないことが怖さにつながっている」といった気づきを得たことが述べられました。社会へ出ていく時期が近づく生徒たちにとってかけがえのないものになったはずです。「実習先の体験で、これを将来の仕事にしよう、と思った人はいますか?」という教員の質問に「選択肢のひとつになった」と答える生徒もいました。


 
すでに体験を終えている上の学年の生徒たちも、今年度の実習の様子を聴くことで「そう、あれは大変だったよね」とうなづきあったり、お世話になった受入先の写真を見て思い出話が飛び出したりと、共通の体験をすることで各学年のつながりが深まっていく様子も伺えました。
 
生徒たち自身の言葉で語られる報告会からは、それぞれの実習が、作物を生み出す苦労や喜び、加工して価値を生み出すことの知恵や誇り、そして人と人との思いやりや理解の大切さを深く感じられる機会となっていることが伝わります。そして、未知の若者を受け入れてくださる実習先の皆さんや、実習先をアレンジする教員への感謝も伝えられました。

次の年の実習でも、生徒たちは自分の世界を広げるようなかけがえのない体験をするに違いありません。生徒それぞれが、報告会を通して自分の進路や次の実習の様子を思い描いていたのではないでしょうか。

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