2025.01.22
高等部生徒たちの実習報告会(1)〜農業実習・職業実習〜
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.201 2025.1.22
高等部9年生から11年生で体験するさまざまな実習は、シュタイナー学園の特色のひとつです。なかでも毎年秋に行われる9年生の農業実習、10年生の職業実習、11年生の福祉実習は、生徒たちにとってかけがえのない体験となる実習です。
農業実習では第1次産業の現場を訪れ、合宿所に全員で寝泊まりしながら生産者さんのもとで作物を育て、時には出荷までの仕事を2週間にわたって体験します。職業実習では1週間、製造業を中心に素材を加工して商品として世に送り出すことを体験。そして福祉実習では、障がいをもつ方々の施設などで3週間働き、社会と関わることに目覚めるような体験をしてきます。それぞれ実習後は生徒による報告会が開かれ、生徒・教職員と保護者が参加しました。
9年生は、宮崎県綾町でグループに分かれて今年は5つの農園にお世話になりました。報告会で生徒たちは、農作業などの写真を見せながら、グループ毎にお世話になった農園の特徴、具体的な作業や生産者さんそれぞれのお人柄、印象に残った出来事を話しました。土に触れる心地良さや、いただいた農産物の美味しさはもちろん、指導してくださった皆さんが作業の合間に語ってくれる農業への想いや、社会への問題意識といった話が心に残ったようです。
2週間で2万株もの野菜の苗を植えるなど、腰が痛くなるような作業の苦労を思い知る一方、作業をやり切った達成感も味わった9年生たち。「野菜がどれほど愛情を注がれているかを感じた」「農業のやりがいを考えた時に、一から育てて成長を見守ること、誰かの命を支えられること、自然の中で暮らすことがあると感じた」と、振り返る生徒もいました。2週間をともに過ごすことで、生徒たち同士も互いにまだ知らなかった一面を知ることができた、など共同生活そのものも大きな体験になったようです。
10年生は、藤野地域や神奈川県内、東京都内の製造業を中心に多様な職業体験をしました。製パンやタオル製造といった身近なものから、身の回りにあっても普段は見えない断熱材の製造など、生徒たちは実際に体験したからこそ知った、ものづくりの現場の様子をしっかりと説明していました。作業は繰り返し同じことをする根気と忍耐力のいるものや、「気が狂いそうだった」というほど細かいものなどさまざま。それでも「スタッフさんが『楽しんでやろう』と声をかけてくれたことがきっかけで、ミスが減り充実した実習になった」と感じたそうです。
実習先は必ずしも生徒自身の希望通りに選べないこともあります。しかしそうした実習からも、「単純な作業も注意が必要で、丁寧に作業することで高品質のものができるとわかった」「ひたすら縫う作業をしたが、商品になると思うとやりがいを感じた」「いいアイデアがあったら教えてね、と声をかけられ、製造業も一人ひとりのアイデアが求められているんだと感じた」「ものづくりは作ったものに誇りがある。褒められることで自信がつくのではなく、自分で良いものを作ったと思える、内側からの自信があるとわかった」といった感想を持ち、多くのことを学んだ様子が伝わりました。
次回は、11年生による福祉実習の報告会の様子をお伝えします。
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