2018.11.07
アメリカのシュタイナー学校は日本とちがう部分もありましたが、改めてシュタイナー教育の良さを感じられました
卒業生コラム 第18期生 中村美里さん(後編)
【中村美里さん】
現在、山梨学院大学国際リベラルアーツ学部に在学している中村美里(みのり)さんのお話、後編をお届けします。前編では、幼少期から触れていた学園の学びがあらゆる興味の鍵となったというお話を伺いました。後編では、より印象的だったという高等部での学びと、その先に見つけた将来の夢についてお聞きしました。
高等部での生活はいかがでしたか?
高等部では実習が多くあります。農業実習ではバイオダイナミック農法(※1)のレクチャーを受けて農作業をしたり、福祉実習では病院の高齢者病棟でシャワーや検温、食事のサポートなどを3週間行ったり、実習を通して社会について知り、考えるきっかけをもらうことも多くありました。高校生になると、それぞれ興味のある分野が明確になってくると思うのですが、わたしが特に夢中になったのは英語とダンスでした。
何かきっかけがあったのでしょうか?
英語は、10年生の時に一時的にアメリカから来ていたエミリー先生という先生が大好きだったんです。彼女がアメリカに帰る時に『遊びにきてね』と言ってくれたので、本当に行こうと思って、その日から姉と2人で英語を勉強しました。ラジオで英会話を聞いて、単語は自分で単語帳を買って、あとは毎日英語で日記をつけて。初めて学校以外で勉強したのですが、すごく楽しくてずっと勉強していました。それでけっこう話せるようになったので、翌年の夏に本当にアメリカに行ったんです。エミリー先生に紹介してもらってアメリカのシュタイナー学校のサマーキャンプにも参加したりしました。アメリカのシュタイナー学校は日本とちがう部分もありましたが、改めてシュタイナー教育の良さを感じられましたし、もっと英語を学びたい、留学したいという気持ちも湧きました。
ダンスにも夢中になっていたんですね。美里さんのオイリュトミーは素晴らしいと保護者の間でも評判です。
踊ることはずっと大好きでした。オイリュトミー(※2)のほかに学園でダンス部をつくり活動していました。夢中になるものに出会えた高等部の時間でしたが、いざ進路を考えた時に、留学もしたいしダンスもしたいし、アートや政治についても学びたいし…やりたいことがありすぎて困りました(笑)それでいろいろな分野を学べるリベラルアーツ学部に入学したのですが、3年生になるとその中でも主専考を決めます。今ではやりたいことが自分の中ではっきりと見えてきたので、パフォーミングアーツ(※3)を選びました。交換留学先のカナダの大学も演劇とダンスに力をいれているので、重点的により深く学んでいきたいと思っています。
今現在見えてきたというやりたいことと、この先の夢について聞かせていただけますか?
ダンスの振り付けや舞台演出などのパフォーマンス創作に関わりたいという夢があるので、今はダンスや演出、舞台美術についてしっかりと学んでいきたいと思っています。でも、もうひとつ最近夢を持つようになって、それはいつかシュタイナー学園の教員になりたいということです。在学時から先生たちをかっこいいと思っていたのですが、卒業して外から見た時に改めてすごい人たちだったな、と思うようになりました。アメリカのサマーキャンプに参加したように、日本だけではなくいろいろな国のシュタイナー教育の現場に触れて、いつかわたし自身もシュタイナー学校の先生として子どもたちに何かを伝えられる存在になれたらと思います。
子どもの時に育まれた「学ぶことが楽しくてしかたない!」という気持ち。その気持ちはあらゆることへの興味や関心を引き立てるきっかけとなり、また自分の一番好きなものを見つけ、一直線に向かっていくことができる力になるのかもしれない、そんなことを思った美里さんのお話でした。夢に向かって進む美里さんが、いつかまた多くのものを手にシュタイナー学園に帰ってきてくれるかもしれないと思うと、その日が楽しみでなりません。美里さん、ありがとうございました!
※1 ルドルフ・シュタイナーによって提唱された循環型の有機農法・自然農法。
※2 シュタイナー学校での芸術教科で、言葉や音楽を身体を通して表現する運動芸術
※3 演劇、舞踊など肉体の行為によって表現する芸術。
ライター/中村暁野