学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.08.03

教育

シュタイナー学園の書道

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.138 2022.8.3

2019年から中国語、また今年度から書道を担当しております清水恵美と申します。 
 
大学で日本画を専攻し、卒業後、沖縄での植物スケッチから墨を使用し始め(光と影のコントラストが強いので)、水墨画を学ぶために中国の美術大学に留学しました。中国では書画同源といい、水墨画と書を共に学びます。筆を用いた漢字の造形は水墨画と密接な関係があるためで す。 
 
シュタイナーの西洋美術史では中世ルネッサンス以降、個人的意識の発展へと進みます。中国では中世期は三国末から元の終わりにあたり(581年~1368年)、この時代に書と水墨画が発展し、東晋時代から書の造形に骨・肉・筋を見るようになります。また、個人の作による水墨画もこの時代から出てきます(漢代にあったともいわれています)。

 欧米のシュタイナー学校では、4年生から「カリグラフィー」という飾り文字を美しく書く練習を始めるのに倣い、日本では書道がそれに該当するだろうということで書道を導入しています。4年生は小さな自我が目覚める時期なので、より個性を発揮する字を工夫する時期になります。

古代、音から言語は始まりますが、象形文字は目を使って世界を認識し、把握しました(表語文字)。東アジアの文字の発明と審美は、早い時代に目が働きだしたところにその特徴があると思います。 
 
書は筆を用い、全身で紙に向かって線を描きます。足を地面につけて踏ん張り、体幹を整えて丹田から力を出して線を描くのです(立って書くとすぐにわかります)。その点では、フォルメン(※形を形成するときの動きの道、軌跡を体験する芸術体験)と親和性があります。身体を使う点で、ある先生はオイリュトミー(※シュタイナー学校の芸術教科で、言葉や音楽を、身体を通して表現する運動芸術)との親和性を感じていらっしゃいました。色は使いませんが、全身からの力を受ける柔らかな穂先と宣紙の自然なにじみが、感情的な働きを補います。象形文字は抽象性が高く、世界を、線を描きながら把握しようとする点も似ています。 
 
専門に書を始めるとき、まずは2か月ほど、横線・波・渦巻を書く練習のみを行います。身体全体を使って余分な力を抜いていき、体幹から出る力を穂先につたえ、芯があり、丸みのある線が自然にできていくのを練り上げていきます。ですから私の授業でも、どの学年もまず1コマ目は線の練習をします。そして、1枚目から5枚目を並べ、線の質に変化が起こっていることを一人ひとり見ていきます。また私も一人ひとりの状態をその線から知ることができます。この線の練習は毎時間の1枚目、ウォームアップとして続けられます。 
 
大まかな練習目標は以下です。4年生はまず筆の持ち方や姿勢、筆で字を書くことになれる練習。5~6年生は特に細部ではなく、文字や並びのバランスに注意し、四季に関係した言葉を書きます。7年生ではまず、文字の細部と字の構成を具体的に分析して練習し、抽象的な言葉、またひらがなの練習もします。8年生では中国古典の入門と書の歴史(中国・日本)、行書の練習へと進みます。 
 
実は私は子どものころ、書道が苦手でした。説明もなく「姿勢よく」「一気呵成に」「二度書き禁止」と形から入る学習になじめず、また美しいとも感じない先生の文字をなぜ模写しなければならないのかわかりませんでした。ですので、私の授業では古典の書を見せたり、筆の持ち方(これも国によって違いがあります)、姿勢よくしなければならない理由や字の構成や筆の動きと持ち方や角度の関係など、具体的な説明を必ずしています。また、個人が上達するために自分で思いついた方法を模索することも認め、授業を進めています。 
 
ライター/教員 清水恵美