2022.12.21
一人ひとりの光を灯すアドヴェントガーデン
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.147 2022.12.21
落ち葉がはらはらと舞い、日が暮れるのが早くなってくると、今年もまたアドヴェント(※)の季節が近づいてきたと少しわくわくしながら、でも一方ではしんとした静けさが心に降りてくるのを感じます。
クリスマスを待つ4週間のアドヴェントが始まる前の日、1年生の子どもたちは深い闇と光の体験、アドヴェントガーデンを行いました。
その日各家庭で1日を静かに過ごした子どもたちは、薄暗くなり始める夕方、学校に集まります。完全に日が落ちあたりが闇に包まれると、神聖な静けさの中アドヴェントガーデンは始まります。
先生を先頭に暗い部屋に入ってきた子どもたち。部屋の中央にはろうそくが1本灯っており、そのろうそくを中心として、もみの枝でできた渦巻き状の道がぼんやりと見えます。子どもたちは一人ずつりんごろうそくを手に持ち、その渦巻きの中へと歩いていきます。中心まで行くと、灯っているろうそくから自分のりんごろうそくへ火をもらい、また渦巻きの道を歩いて戻ってきます。火が灯ったりんごろうそくは、道の途中にある星の上に順番に置いていきます。
一人ひとりの歩みはそれぞれ。ゆっくり進んでいく子、走らんばかりの勢いで行く子、ニコニコしている子、不安そうな子。足音も歩く速さもみんな違っています。私は同じように渦の道を歩いたことがありますが、渦巻きの道をひとり歩いていくのは思っているよりも不安で勇気がいります。子どもたちはどんな気持ちで歩いたのでしょう。大人の視点で見れば、渦の道はまるで天空を写し取ったかのように見えたり、また逆に心の中に深く潜っていくようにも思えたり、あるいは子どもたちが歩んでいく人生の道と捉えることもできるかもしれません。道の先にはひとつの輝く光があります。その灯りをりんごろうそくにもらうと共に、子どもたちが自分の心にも宿し、自らの光として勇気や温かさ、そして強さとして輝かせていくことを願います。
親たちは部屋の後ろに座り、子どもたちの歩みを見守りました。声をかけたり手助けしたりすることはできません。けれど子どものそのままを受け入れ見守ることは、それだけで確かに温かく子どもたちを包んでいると感じました。一人ひとりの歩く姿に、あなたのまま、あなたの道を歩いて行けばいいという思いが湧き起こり、親として信じて見守るという大切な役割を、改めて内なる光としてもらったように思いました。
全員が歩き終わると、あれほど暗かった部屋が明るくなっています。子どもたちが一つひとつもみの道に置いたりんごろうそくの灯りが集まって大きな光となり、部屋を照らしてくれるのです。それは一人ひとりがりんごろうそくのように、世界を照らす力となることができ、それが集まるとこうも明るく照らすことができるという、未来への道標のような感動的な光景でした。
暗闇の中で光の尊さを体験した子どもたち。アドヴェントガーデンの時間すべてが、これから先の子どもたちの力に、そして私たち親の力にもきっとなっていくことと思います。
※アドヴェント(Advent)…待降節ともいい、キリストの誕生を待ち望む期間。到着を意味するラテン語「advenire」に由来。
ライター/保護者 長谷川敦子