学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.05.10

教育

シュタイナー学校のノート作り

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.157 2023.5.10

学園のオープンデイに足を運んでいただくと様々な講座や催し物と共に、校舎内には子どもたちが作ったたくさんの作品が展示されています。子ども達が編んだ編み物や粘土で作られた動物が飾られ、壁には濡らし絵や層技法で描かれたこの教育独自の水彩が貼られていたり。そんな中、「子どもたちが描いた美しい色のエポック・ノートに驚いた!」という声をよく聞きます。 

エポック・ノートというのは、シュタイナー教育特有の「エポック授業」で子どもたちが書いていくノートです。1年生から12年生まで、主要科目の「国語」や「算数」などのひとつの科目を3~4週間、毎朝の105分授業を学び、その中の学びの一環として子どもたちがノートを作っていきます。 

低学年の時はこのノートにクレヨンを用いて、先生が黒板に描く絵を真似て描いたり、字を書いていきます。段々と学年が上がるにつれ、クレヨンが色鉛筆に代わり、万年筆となっていきます。子どもたちはその日の授業内容を自分たちでまとめて、各ページをきれいにデザインしたり、デコレーションを加えたりしながら、各自が個性的なノート作りを行っていくのです。 

私たちは「教育は、受け身であってはならない」と考えています。「子どもたちが教師から何かを教えられたものを、ただまる覚えして良しとする」のではなく、与えられたものを自分たちで「触り」、「匂いを嗅ぎ」、「味わい」、そして「得たものから自ら何かを発動」して初めて、それが子どもたちの中で学びとして定着していく、と。なので、授業において子どもたちがただ黙って座って学びを行うことなど考えられません。

多くの場合シュタイナー教育では、芸術的な行為を通して学ぶことが多くみられます。詩を唱えたり、歌を歌ったり、笛を吹いたり、体を動かしたり、絵を描いたり。芸術的アプローチを通じて感情が刺激され、手足を用い、何度も繰り返されることで学びが深く入っていき、自分のものへと同化していくことができるのです。つまりは学びが抽象的なままで終わらずに、自分の身体と五感を通して体験する主体的な学びへと変換されていくのです。 

だから低学年の児童であっても、授業を受けてただお客さんのまま帰ることはありません。それは、誕生日会でも同じで、普通は誕生日には多くの友達から祝福の言葉やプレゼントを貰いますが、学園では自らケーキやお菓子を焼いてクラスメイトに配るのが習わしになっています。喜ばしい事を他者が与えてくれるまで待つのではなく、逆に自らが「喜び」を他者へと積極的に働きかけることが求められるのです。しかも、子どもたちが互いにするプレゼントは買ったものではなく、当たり前のように自ら手作りしたものを贈り物として用意します。 

これと同じで、授業を受けてそれで終わりなどということはあり得ません。学んだ内容を、自分の手と感性と知恵を通して、ノートという形にすることが例外なく1年生から習慣化されています。それは例え同じ学びだとしても、一人ひとりの子どもの個性で、塗られている色が違ったり、描かれている絵が違ったり、ひとつとして同じものはありません。個々の自由意志と個性が尊重される環境がそこにはあるのです。 

多くの場合、卒業してからも学園での学びが描かれたエポック・ノートは子どもたちにとって、思い出深い宝物なのだそう。 

あなたも子どもたちが作っているエポック・ノートを見に、学園へ足を運んでみませんか? 

ライター/教員 木村義人