2023.07.05
宝物のような時間 保育園のオイリュトミー
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.161 2023.7.5
シュタイナー学園に隣接する「とねりこ子どもの家」、そして八王子市高尾にある「おひさま子どもの家」は、シュタイナー幼児教育に基づいた保育園です。今回は、シュタイナー保育で取り入れられているオイリュトミーについて、横手千代先生にお話を伺いました。
オイリュトミーは言葉や音楽を、身体を通して表現する運動芸術です。音に応じた動きがあり、それぞれ意味を持ちます。言葉もお話だったり詩だったり、音楽もライアーという素朴な弦楽器の演奏だったり誰もが知るようなピアノ曲だったりと、取り組む内容は子どもの成長段階に合わせて変わっていきます。
私たちは、生まれてから最初の7年間はまず体をつくる時期だと考えています。心や、考えるという頭の部分への働きかけは、体をつくってからの段階ととらえます。幼児期とは、大人のふるまいも含めて、自分の周りの世界を全て受け入れ、模倣する時期です。身の回りのものをまねて動いたり、話したり。その力を生かしてオイリュトミーも行います。
保育園でのオイリュトミーは、時間にすると15分から20分ほどです。オイリュトミーの時間が来ると、子どもたちは先生に導かれてゆったりしたひざ下ぐらいまでのドレスと、柔らかい靴に着替えます。グロッケンという楽器の響きや、ライアーの音を聴きながら静かにオイリュトミーの先生が入ってくるのを待っています。
私もそれを合図に中に入り、優しい音の出る金属製の玉を子どもに渡してはまた受け取る、という動きをしながら一人ひとりと挨拶し、始まりの準備をします。それからライアーの音に合わせて歌いながらオイリュトミーの空間へ入っていきます。みんなでまるい輪に立ってオイリュトミーの始まりです。
そこから季節に合わせたお話を語って子どもたちとお話の中へ入っていきます。例えば春は、冬の間眠っていた動物たちや、小人さんたちが目覚めて野へ出ていくお話。そよそよと風が吹いたり時には雨が降ったり。そんな情景を描き出しながら、オイリュトミー固有の動きを取り入れて動いていきます。子どもたちは私と一緒に風を感じて動いたり、雨を感じて驚いてみたり、模倣の力のある幼児期はお話の世界に浸りきって体験することができます。
最後はゆっくりとしたライアーの曲で、ゆらゆらと眠りに落ちていくように静かに終わります。年少さんから年長さんまで一緒に行うのですが、まだ小さな年少さんは本当に寝てしまったこともありました。
ある時、こんなお子さんと出会いました。言葉のやり取りはとても敏感に反応するのですが、体のほうはというと、足もとがフラフラしがちで全体の動きはどこかチグハグ。体をつくる時期に頭への働きかけに偏っている感じがしました。けれどオイリュトミーはとても楽しそうで、続けるうちに体のチグハグした感じがなくなり、ゆっくりとですがしっかり立つことができるようになっていきました。その子自身が自分の体の中に入った、という感じでした。
現代は、幼児期から頭への働きかけが多くなっているように思います。模倣する力のある幼児期こそ、動くことを通して体をつくることが大切ですし、だからこそ幼児期のオイリュトミーは特に大切で、たくさんの子どもに届けたいと思います。
幼児とのオイリュトミーに限りませんが、小さな子どもと行う前は特に、自分が模倣されて良い存在であろうと思いますし、目に見えないものの力を自分が感じ、その力が子どもたちと一緒に在ってほしいと祈ります。子どもたちを見ていると、目に見えないものの力が働きかけていると感じる瞬間があるのです。だから私にとっても、小さな子どもとのオイリュトミーは宝物の時間です。大人の方にもぜひ一度体験していただきたいと思っています。
お話/オイリュトミー講師 横手千代
*高尾のシュタイナー保育園おひさま子どもの家では園児を募集しています。募集状況についてはお問い合わせください。
【詳細】https://www.steiner.ed.jp/ohisamawaitinglist/