2023.12.20
いろいろな授業が繋がりあってひとつの学びのように
卒業生コラム 第21期生 池辺凜さん (前編)
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.173 2023.12.20
シュタイナー学園を卒業後、東京造形大学でアニメーションを学ばれた池辺凜さん。卒業制作「520」は、大学の大賞をはじめ、さまざまな映画祭で賞を受賞されました。今春卒業し、都内のアニメーション制作会社で働きはじめたばかりの凜さんに、学園時代のこと、シュタイナー教育で育まれたと思うこと、お話をお聞きしました。
シュタイナー教育との出会いを教えてください。
もともと東京に住んでいた両親が暮らしや教育のあり方に疑問を感じ、里山である藤野で暮らしたい、と考えたのがきっかけでした。小学校に上がるタイミングで引っ越したのですが、移住を検討していた時、藤野に移転して少し経っていたシュタイナー学園のことを両親が知り、その教育に共感したそうです。引っ越しと同時に小学校からシュタイナー学園に通いはじめました。
学校生活はどうでしたか?
入学するまでは一般の保育園に通っていたので、テレビや音のなるようなおもちゃが暮らしの中にあったり、ランドセルをしょってみんなと同じ学校に行きたいと思っていたり。新しい土地や学校に多少の抵抗感もあった気がするのですが、学園に通い始めたらとても楽しくて。それまで泣いて母から離れられない子どもだったらしいのですが、泣くこともなく元気に通っていました。それまで触れていたはずのテレビやおもちゃもすんなりと手放せました。それだけ学園での生活が楽しく、夢中になれたのだと思います。
印象に残っている学びはありますか?
学園の学びはいろいろな授業が繋がりあってひとつの学びのように受けとれる授業が多かったです。毎日学びの中でお話を聞けるのが楽しみで「明日もお話の続きが聞ける」と思っていました。当時はクラスで先生のお話を再現してみせたりもしていたようです。あとは手の仕事が好きでした。外遊びが大好きな子が多い中、部屋の中でもの作りをしたりごっこ遊びがしたい子でした。学園では4年生から学園の図書室で本が借りられるのですが、本を読むのも大好きでした。
学年が上がってくるとシュタイナー教育や学園への反発が生まれる場合もあると聞きます。凜さんはいかがでしたか?
5〜6年生くらいから、学校の図書室にはないような本も読みたいと思ったり、それで実際に友達に借りてシュタイナー学園の外の世界への興味も生まれていきました。今まで不満がなかったのに急に保育園の頃に持っていた音のなるおもちゃの存在を思い出し「あれがないのはなんで?」なんて思ったり。
学園の特色のひとつでもあるオイリュトミー(※1)の授業がいやになったり、クラス内でもその頃には摩擦や対立も生まれました。小さな反発はたくさんありましたが、手の仕事の課題だったヴァルドルフ人形(※2)作りや、園芸の授業の野菜作りなど、好きな学びもたくさんあり、やりたいと思ったことは納得いくまで取り組んでいました。なんだかんだ文句をいいながらも楽しんでいたんだと思います。
※1)オイリュトミー:シュタイナー学校の芸術教科で、言葉や音楽を身体を通して表現する運動芸術
※2) ヴァルドルフ人形:シュタイナー教育の考えに基づく、自然素材を用いた写実的ではない素朴な人形
8年生くらいになると反発はなくなっていました。クラスメイトとの関係もそれまで距離があった人とも仲良くなったり、担任の先生のおうちに休みの日に遊びに行かせてもらったり。その頃観始めて、夢中になったジブリのアニメーションの話を工芸の先生としたり先生方とも自分の好きな世界を通してよりいろいろな話をするようになっていきました。
高等部に上がる時に外部の学校に行くことは考えなかったのでしょうか?
一般の高校に憧れもありましたが、12年劇(※3)や卒業プロジェクト(※4)など自分が見てきた高等部の学びをしたいという気持ちがあったので高等部に行くことに迷いはなかったように思います。高等部になると、より自分の興味や関心があることがはっきりしていきました。学園以外の世界との繋がりも生まれ、絵を描いたり、高等部から触れるようになったエンターテイメントの世界に夢中になっていった時期でもありました。
※3) 12年劇:脚本選びから配役・衣装・音楽・舞台装置など劇に関わるすべてを生徒主体で行う卒業演劇
※4) 卒業プロジェクト:自らテーマを決め1年間かけて探求し、その成果を発表しレポートにまとめる12年間の学びの集大成
学園での学びを楽しみ、じょじょに興味や関心をひろげていった凜さん。後編では、学園で得たものが現在のお仕事につながるまでを伺います。
ライター/保護者 中村暁野