2024.04.03
ともに歩いていくということ
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.180 2024.4.3
2024年3月、長男がシュタイナー学園高等部を卒業しました。私たち家族は2009年3月に長女(23期生)の学園入学にあわせて藤野に引っ越してきました。はじめての藤野暮らしへの期待と不安のなか、すでに移住していた先輩家族の皆さんが地元の方たちと上手にコミュニケーションを構築してくださっていたおかげで、私たち家族も地域の方たちに気持ちよく受け入れていただき、はじめての自治会や地域の活動なども経験しながら、シュタイナー学園との協同生活が始まりました。
当時、シュタイナー学園はすでに初等部・中等部は学校法人化していましたが、高等部はまだNPO法人でした。シュタイナー学園は12年間というプロセスを通してこそ、子どもたちへの真の教育が可能になるという確固たる理念のもと、全教師と全保護者が一丸となって初・中等部の学校法人化に続いて高等部設立に対しても昼夜を問わず獅子奮迅の働きをしてきました。
新規に高等部設立が認可されるためへの資金調達、校舎・用地の確保、申請から許可への長い道のり、社会的認知の獲得など様々な膨大な課題に対して、経営の専門家でもない学園の教師・保護者全員が向き合う姿は、目の前にある巨岩を何とか数cmでも動かそうとするかのごとくでした。とくに理事や教員の方たちは仕事でもなく、報酬があるわけでもなく、休日や睡眠時間を返上して先頭にたって牽引してくださりました。
私たち夫婦も微力でも何かできることはあるという思いで、皆と一緒に高等部設立を目指してきました。このシュタイナー学園は箱と土地とお金で体裁よく出来上がったわけではありません。汗と涙と信念でできた、まさにド根性学校なのです。そして、待望の高等部がまさに開校した2012年春、長男がシュタイナー学園に入学しました。
当時、私は30歳半ばをすぎ、自分の子どものことだけで頭がいっぱいでした。ところが、ここに集う先輩たちは未来の子どもたち全員のこと、そして、その子どもたちが暮すこれからの社会のことを常に考えて行動していました。自分の子ども云々という以前に、これからの子どもたち全員のために、この学校を創ろうという、その精神と魂の崇高さに頭をガツンと叩かれた思いでした。
そして、さらにびっくりしたことは、ここに集う大人たちは遊び名人で、大人自身が率先して楽しいことやワクワクすることを見つけてはみんなでそれをシェアし、みんなで楽しく過ごすことが大好きな人ばかりだということです。子どもたちにとって普段の授業はもちろんのこと、こうした心から信頼できる大勢の大人たちに囲まれて育つとどういうふうになるか、これは学園のたくさんの卒業生たちを見ているとよくわかります。
長男は小さいときからずっと、こうした学園の大人たちの姿を常に見続けてきました。教育の内容や理念はもちろん大切ですが、この学園共同体の大人たちが常に支え合っている外なる世界を信頼してきたからこそ、彼は成長していく自分自身の内なる世界への信頼もまた力強く形成することができました。この4月から彼は自分の道を実現するためにドイツへと単身旅立ちます。シュタイナー学園の卒業生として、これからも人生を存分に生きていってくれると信じています。そして、大人たちにも素晴らしい学園生活をプレゼントしてくれるすべての子どもたちに心から感謝します。
ライター/保護者 志水祥介