学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.08.21

卒業生

「できるようになる」よりも、大切なこと

卒業生コラム 第10期生 脇元克也さん × 第23期生 石橋蒼土さん(後編)

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.190 2024.8.21

シュタイナー学園第10期生で、現在は学園で体育と数学の授業を受け持つ脇元克也先生。同じくシュタイナー学園を2021年春に卒業し、教員を目指して大学に通っている第23期生の石橋蒼土さん。お二人に“教員を選んだ理由”や“教員として大切にしたいこと”などについて対談していただきました。

前編はこちら


石橋蒼土さん(以下、石橋) 僕は自分が子どもたちに教える内容を、教員側がどれだけ「面白い」と実感しているのかが重要になるなと感じています。そういうことが子どもたちにも伝わるのかな、と。
 
脇元克也先生(以下、脇元) そうですね、それは伝わると思います。私自身、体育と数学は学生時代から好きでしたから、授業は楽しめていると思います。
 
石橋 教育実習に行った時、僕は45分の授業時間内に内容を伝えきることに精一杯で、その内容を面白いと思う余裕なんてありませんでした。今、シュタイナー学園主催の教員養成講座に参加していますが、それぞれの先生がその授業を心の底から面白いと思っていることがしっかり伝わってきます。僕も可能な限りそうなりたいと思っています。
 
脇元 私は、その科目に苦手意識がある子とか、楽しいと思えない子をしっかりケアしていきたいとも思っています。今どの段階に子どもがいるのか、そこを捉えようという努力はしています。つい授業で伝えたい最終地点に辿り着かせようとしてしまいますが、“できるようになる”よりも“その授業の時間をどういう気持ちで過ごせたか”がまず大切だと思うのです。

そもそも、みんなが一律に同じように授業の内容を理解して、できるようになるなんてありえません。それぞれ理解の速度や程度は違って当たり前で、だからこそクラス全体で教え合うことができる。それこそが学びです。

シュタイナー学園では、米作りや家作り、服作りなどを行います。手を動かして何かを作り出す学びを多く行うので、苦手があっても「生きていく上で基本的なことはなんでもできる」という自信をもらいました。
 
石橋 僕は英語が苦手です。だけど物を作るようなことなら「これは作れない」と思うことはありません。「絶対にこれはできない」とは思わないですね。
 
脇元 私も絵を描くことは未だに苦手です。でも、苦手なりに楽しい。そんな感覚が大切なのかなと思います。
 
石橋 そうですね。学園を卒業して、大学で学んだり、教育実習に行ったりする中で思ったことですが、何かができなくても「それでいいじゃん」と思える感覚があります。それは、諦めるという意味ではないんです。これが自己肯定感なのですかね。自分にも他人にも完璧を求めていないですし、当たり前の感覚としてそれがあります。できないことを受け入れるとか、多様性とかそういうことではなくて、そもそもできることやできないこと、得意なこと、それぞれの個性があって当然というか…。
 
脇元 誰かと同じようにできなくて気になることはあるけれど、だからダメとは思わない。自分らしさ、その人らしさ。こういう感覚は、もしかしたら学園で教わったことなのかもしれません。
 
石橋 僕は教員になったら、学び続けるだけではなく、研究し続けたいと思っています。どう指導したらより伝わるか? とか。それが子どもと向き合うことにつながると思っています。
 
脇元 私も“初心忘れるべからず”で、学生時代の気持ちを忘れずにこれからもやっていきたいと思います。ありがとうございました。

ライター/林 亜沙美