学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.09.18

保護者

子育てと交換留学

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.192 2024.9.18

 交換留学って? 
10年または11年生時、世界に1000校以上あると言われているシュタイナー学校の生徒と我が子をお互いに3ヶ月間預け、現地の学校に通うというものです。
娘はフィリピン・マニラのシュタイナー学校に自ら連絡して相手を募ってもらい、運よく希望者があり実現。息子は学園に張り出されていた募集を見て連絡し、アメリカ・ロサンゼルスのシュタイナー学校と交換留学が決まりました。

【 違うということ 】
ロザンゼルスっ子が我が家に3ヶ月滞在するって…もちろん、大変なこともあるんですよ!
言語や目の色はすぐに明確に違いがわかるけれど、育ってきた環境が違うので、どこで靴を脱ぐかも、お風呂の入り方も、ご飯の食べ方も、違う。お金の使い方も、習慣が全て違う。最初は違いをネガティブに捉えてしまい、息子は必要なこと以外は口にしなくなってしまって、ろくに返事もしない冷たい対応。喧嘩しやしないかとヒヤヒヤしていました。
1ヶ月を過ぎてくると、さまざまな体験を経てお互いを認め合うようになっていくものなのですね。3ヶ月一緒に暮らすと、最終的には羽田空港のゲート前で感動的な別れがくるんです。
交換留学って「どうにもならない違いを受け入れなければならない」という機会を自ら選ぶことなんだと思います。私たちの違いは大きかっただけに、家族が得たものも大きくなりました。

【 勉強しなさい! 】
高等部に進学した頃、怠惰に見える息子に「宿題したの?やりなさい!」って、強く言ったところで何も起きない。それどころか関係性を悪くする。そんなことありました。そもそも本人の動機や課題感がなければ、自律的な学習って始まらないんですよね。
ちょうどその頃に交換留学の機会が訪れ、大変助かりました。
行ったことのない海外に1人で行って、生活習慣も言語も苦労して、見たことないものに出会い、視野が広がり、自信と課題感を得て、価値観が“親との暮らしの軸”に加えて“留学先の軸”ができて立体的に見えるようになってくる。そして好奇心の向く方向になんとなく気が付く。
娘も息子も交換留学の体験の先に内的動機が湧いてきて、自律的な暮らしや学習へと変化した感じがしています。

【 経済的にどうしよう! 】
私は子ども3人のシングルファザー。正直なところ経済的に難しい。
経済に関しては、親が諦めたらそこで終了ですから、「トビタテ!留学JAPAN」という奨学金にチャレンジしてみました。申込用紙は高校生本人が書くものが多く、問いはこんな具合です。
「高校卒業後の進路や10年後の自分の将来をイメージして、どのような夢を描いていますか。また、国境を越えた探究活動を通じて得た学びを、社会にどのように還元しようと考えていますか」
1ヶ月毎晩、このような設問に向き合って申込書類を書き上げました。これだけ向き合ったら、彼の中にも変化が起きるのはいうまでもなく。更に私にも変化が!「宿題、やった?」から「その宿題、大変そうだね。手伝おうか?」に変わりました。関係性が変わったんですね。合否に関係なく得るものがありました。

【 親が時代の最先端に生きていないからこそ 】
親は過去を生きてきて経験を積んでいるけれど、最先端を生きているのは子どもたち。残念ながら私たちは彼らの持っている能力に気づくことすらできないですね。
彼らが最先端の感覚とその能力で時代の流れを読んで、その時々で自分で選択できるようになれたらいいですよね。だからこそ、選択可能な選択肢の幅を持つこと。自分で選択する能力を持つこと。時代の最先端の感覚を磨くことが、大切だと思うんですよね。
本人が何を選ぶのか? 私にはわかりませんけれど、私にできることって、その大切なものを育む学習機会を提供して陰で応援することぐらいしかないですね。
子育ての最後の方に課題が出されるとしたら、“親の知らない領域に我が子を出すこと”そんなものがありそうです。どう向き合おうかな? 楽しみです。

【 心の安全がチャレンジを後押しする 】
何か思い切ってチャレンジするとき。今まで話せなかった、心にしまっていた本音を話すとき。必要なことは、親子の日常の関係性の中で心の安全が確保されていることですよね。
ここに我が家の体験を書きました。体験を共有することも大切ですけれど、私と我が子の関係性も大切にしたいので、息子に「読んだよ」なんて言わないでくださいね。彼の挑戦を支える関係性をそっと見守っていただけたら嬉しいです。

ライター/保護者 加藤大吾