学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.10.02

教育

学び続けるシュタイナー学校の先生たち 〜夏のヴァルドルフ教員の集い〜

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.193 2024.10.2

全国のシュタイナー学校の先生らが集まり研修・交流を行う「ヴァルドルフ教員の集い」。今夏は藤野のシュタイナー学園で開催され、シュタイナー教育に携わる100名の参加者が、基調講演と各種分科会、そして交流の時間を持ちました。

基調講演には、主に欧米のシュタイナー学校で取り入れられている「ボートマー体操」の専門家であり、経験豊かな体育教員マーティン・ベイカー氏をイギリスからお招きしました。招聘を企画した体育科の、木原希先生にお話を伺いました。

「きっかけは昨年の教員の集いです。他校の先生から、アジアではあまり根づいていないボートマー体操の素晴らしい先生がいるとお聞きし、ぜひ今年の基調講演にと体育科から提案しました。経験豊かな先生方にサポートしていただきながら準備し、実現できました」

ボートマー体操は、体育教師ボートマーがシュタイナーの哲学をもとに考案した動きで、シュタイナーの体育に対する見方を変えたほど、体と哲学に深い洞察を与えるものだといいます。基調講演では、ベイカー氏による子どもの発達段階に合わせた体育のアプローチについてのお話だけでなく、実際にたくさんの動きを体験しました。

「とにかく体を動かしました。前後左右上下といった空間の意味や、そこでの動きの意味、それがどの年齢の子どもにどんな意味を持つのか、ということを丁寧に話してくださり、体育という教科を超えた学びでした」

例えば思春期を迎える7年生の時期、子どもたちはずっしりと重くなっていく体を感じ、何をしてもおっくうな様子を見せます。ベイカー氏はそんな時期の子どもたちには重力を感じる動きをたくさんさせるそうです。

「体育館にマットを敷き、舞台上から後ろ向きに落下する体験をしました。怖いのですが、後ろに倒れていくときどこで怖いと感じるか、その境界線は一人ひとりにあります。これが自分の限界を感じることや、信頼を感じるという思春期に大切な体験につながります。他にも、子どもの成長に必要な学びにつながる遊びを、たくさん体験しました」

学童支援員の山野辺智子さんも、この落下の体験は印象に残ったそうです。

「大人は何かに初めて挑戦するときの恐怖を忘れて、子どもが尻込みしていると、早くやってごらん!と軽く声をかけてしまうことがあります。でも、どんなことも初めての一歩を踏み出すのがどれほど勇気がいるかを、この落下の体験で思い出しました」

ボートマー体操は6年生以上で実践され、欧米の高等部では哲学の学びにも取り入れられているそうです。山野辺さんは、身体で感じることで哲学のような抽象的な意味も深く理解できる、「腑に落ちる」感覚を得られたそうです。

シュタイナー教育の教員になって4年目の木原先生も、改めて気づくことが多くあったと言います。

「例えば縄跳びも低学年はファンタジーを取り入れて導入します。紐を地面に置き、『森に蛇がいるね』と想像力を広げて飛んでいきます。体育で想像力を育てるのはとても大切だと教わりました。何か新しい運動に挑戦するとき、できる、という想像力が働かなければ挑戦できないし、できるようにならない、と。シュタイナー教育が大切にするファンタジーの力は体育にももちろん共通だと改めて感じました」

2日間の研修を終え、先生方は2学期に早速ベイカー氏に学んだ動きやアプローチを試したそうです。

「子どもたちからはまさに教わった通りの反応が返ってきました。実践するともっと知りたい気持ちが湧き、この学びを続けたいという思いを強くしました」

学び、実践し、さらに学ぶ意欲が湧く。シュタイナー教育が国や文化、時代を超えて生き生きとつながっている原動力に、学び続ける先生たちの姿があるのではないでしょうか。