2024.10.16
地域とのつながり
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.194 2024.10.16
シュタイナー学園が学校法人として藤野に開校して19年。それまでの都心に近い土地から、藤野という里山への移転は大変な決断でしたが、徐々に地域へと根をおろし、その出会いから数えると20年を迎えます。
学園の前身である「NPO法人 東京シュタイナーシューレ(以下、シューレ)」が藤野と出会ったのは2004年。三鷹市で校舎として借りていた木造の建物は老朽化が進み、教室も不足。新たな校舎探しに奔走していた折、研修のため藤野を訪れた教員が、藤野町(当時)の職員と知り合ったのがきっかけです。
藤野町は少子化により多くの学校の閉校が決まり、その後の活用を検討しているということで、校舎を借りられる可能性が出てきたのです。当時の様子を、高等部校長の浦上裕子先生に伺いました。
「現在初・中等部がある名倉校舎は、『名倉小学校』として地域に愛されてきた小学校でした。閉校が決まると、学校法人を含むいくつかの団体から借りたいという申し出があったそうです。そんな中、校舎利用を話し合う名倉地域の住民協議会ができ、各地区代表者が三鷹のシューレに何度も見学に来てくださいました。『子どもたちが生き生きしていて、授業も面白い。芸術、教育、福祉を軸にした町づくりという藤野町の方針とも合う』と私たちの教育に共感してくださり、シュタイナー教育を藤野の地で、と誘致に動いてくれたのです」
当時、校舎を借りるには学校法人になる必要があり、シューレにとってもその在り方を問う大きな転機。たくさんの話し合いが重ねられました。
「本当に大変でしたが、藤野に生まれ育った方たちの支援は大きく、それを受けて町も積極的に取り組んでくださり、学校法人化という大きな山を乗り越えて藤野へやってきました」
公立校は閉校しましたが、新たな学校ができることで、子育て世代が移住するのは町の期待でもありました。
「人口増とまではいきませんが、横ばいになったと聞きました。また、医療に携わる保護者が地域医療に従事したり、家庭が自治会や子供会に参加したり、地域活性にもつながったのではないでしょうか 」
現在高等部のある校舎は、旧吉野小学校。名倉も吉野もかつては多くの子どもが通った、地域の方々の思い出がつまった場所です。学校があることで静かな住環境を騒がすこともあれば、通学マナーなどの課題も出てきますが、高等部には生徒たちによる地域交流委員会があり、学園祭前などは近隣へご挨拶にうかがいます。また、高校生が地域のお祭を手伝ったり、部活動と地域が協力して新しいイベントを開催したり、ともに地域を盛り上げる試みも生まれています。
学校施設は長年、地元スポーツ振興会の練習や地域の運動会、また地元有志によるイベントにも利用されています。そのひとつ、「藤野まるまるマルシェ」は、地域に開かれた場所をつくれたら、という思いから学園保護者有志が中心となって始まった地域イベントです。校庭に多くのテントが並び、藤野の農産物や食べ物のお店、地元アーティストの作品やパフォーマンスを楽しめる秋恒例の催しとなりつつあります。
学びにも地域の協力は欠かせません。3年生の米づくりや4年生の郷土学など、子どもたちは藤野に暮らしてきた方々からたくさんのことを学んでいます。世代を超えて土地の記憶を伝えていくことも、学園が果たせる役目かもしれません。
「住民協議会の座長だった方が、『“シュタイナー学園が来て良かった”と町の人たちに言ってもらえるように、自分たちも協力は惜しまない』と言ってくださったことをいつも心に留めています。20年経った今、そう思っていただけているでしょうか」
地域とのつながりは学校法人としての学園の出発点であり、これからも大切にしていきたい絆です。