
2025.03.05
自分の音の響きだけではなく、まわりの人の響きにも耳を澄ませる。そんな音楽の授業が大好きでした
卒業生コラム 19期生 西田歩夢さん(前編)
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.204 2025.3.5
シュタイナー学園卒業後、国立音楽大学でチェロを学び、現在国立音楽大学非常勤講師としてチェロを教える傍ら、チェリストとして活躍されている西田歩夢さん。シュタイナー教育を通して音楽に出会ったという西田さんに、学園時代のことから現在までのお話を伺いました。
シュタイナー教育との出会いを教えてください。
母がシュタイナー教育に共感し、北海道にある「ひびきの村」というシュタイナーコミュニティのこども園に通ったのが最初の出会いです。北海道で幼児教育を受けた後、藤野のシュタイナー学園に1年生から入学しました。ちょうど東京三鷹にあった東京シュタイナーシューレが藤野に移転し、学校法人シュタイナー学園になるタイミングでした。引っ越しなどもあり、大きな変化だったと思うのですが、慣れ親しんでいた世界がそのまま続き、広がった感覚で学校を楽しんでいました。
印象に残っている学びはありますか?
音楽の授業が大好きでした。歌も好きでしたし、リコーダーを吹くのも好きでした。シュタイナー教育では、最初に音符を習ったりはしません。リコーダーを吹く時はまず手で笛をあたためてから。先生が吹く姿をよく見て、その通りまねをしておぼえていくのです。自分の音の響きだけではなく、まわりの人の響きにも耳を澄ませる。そんな授業でした。
低学年の頃は、お米を作りおにぎりを全校の人に配った田んぼの授業や、木をぐるりと植えて家にする家づくりの授業もよくおぼえています。どっちかというと外で鬼ごっこをするより室内で遊ぶのが好き、とうような子どもでしたが、田んぼや家づくり、みんなで何かを作る授業は楽しかったです。
楽器をはじめたのは学園のオーケストラがきっかけだとききました。
低学年の頃に学園のオーケストラの演奏を聴いて興味を持ち、自分もその仲間になりたいと思うようになりました。母にチェロを弾きたいと言っても最初は本気だと受け止めてもらえなかったのですが、ちょうどガスパール・カサド国際チェロ・コンクールというコンクールが八王子で開催されて、街中でいろいろな弦楽器体験ができる機会があったのです。そこで弦楽器を一通り弾かせてもらい「やっぱりチェロがやりたい!」と。5年生からチェロを習いはじめ8年生の時に学園のオーケストラに入りました。
チェロのどんなところに魅かれたのですか?
音域が低く、音色が柔らかいところですかね。オーケストラに入るのも最初は少しためらっていたのです。僕がいたクラスは音楽好きな人が多く、クラスにチェロをやっている人が3人、バイオリンをやっている人は7人。みんなオーケストラに入っていました。はじめたばかりだという心配もあったのですが、やっぱり入りたい! と思い入ったのが8年生でした。
学園のオーケストラは練習が週に1回だとききました。
ほかの学校に比べるととても少ない練習量だと思うのですが、指導をしてくださる先生の力と、音楽の授業でも行われているような、まわりの音を聴く力、調和する力を大切に、無理をするのではなく、みんなでひとつのものを作り上げていくようなオーケストラでした。
学園の学びの中で音楽の魅力に触れ、花開いていく西田さんの表現する力。後半に続きます。
ライター/保護者 中村暁野