学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2021.04.14

教育

シュタイナー学園の情報の授業 第2回~創造的な『デザインする視点』で情報と向き合う~

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.104 2021.4.14

情報の授業では、コミュニケーションツールを駆使して、自らの課題や社会の課題を解決する企画案の作成と発表を行います。そのプロセスでは、次のことを大切にしています。

・コミュニケーション(対話)する自分と他者、環境(社会、空間、自然)についてどれほど知っているか、双方の関係をどうしたいのか、を自らに問う。

・自分の課題とは何か?(何を実現したいか) 社会の課題とは何か?(どんな社会を実現したいか) その課題や対話にリアリティはあるか? を自らに問う。

・自分の中にある感情、その源となった原体験等と意識的につながり、言葉、音声、身体、絵、写真、映像や、AR(拡張現実:実在の風景などの現実環境に仮想の視覚情報を重ねて表示し、目の前の現実世界を仮想的に拡張する技術)、VR(バーチャルリアリティ:全視野をおおう視覚聴覚等の情報を与え仮想的に体験させる技術)等の先端のコミュニケーションツールの活用を考える。

具体的には、次のステップで授業の課題に取り組んでもらいます。

①「コミュニケーションツール(言葉〜映像〜V R等)の”特徴”について探究する」

②「自らの感性(興味関心や違和感)や実体験を活用して”探究すべきテーマ”を発見する」

③「企画案作成」と「発表」と「他者のフィードバックによるブラッシュアップ」3つの経験

これらの授業を通して、自分の感性に基づき考える経験を積み上げます。結果、日常でもどうすれば情報の流れが良くなるかと考え、常に自分と他者、自分と環境のより良い関係へ思いを馳せながら、意識的にコミュニケーションを改善していこうとする、創造的な『デザインする』視点で情報と向き合える(情報社会で溺れない)ようになり、今を生きる力の源になると考えます。

実際、生徒たちは、「日常や街中でもこのような視点で意識的に情報やツールを見るようになった」、「できないと思っていたが、自らの興味関心とつながることで企画案を作成し発表ができた」と授業後の感想文で答えています。

3学期になると企画案発表において、なぜそう考えるのかを伝えることができるだけでなく、独自のアイデアが溢れ、瞳の輝きも別人のようになる生徒がいます。おそらく本人の意識、感情、手法(使いこなせるかどうかの見込み)がつながることで、自分の課題解決だけでなく自ら社会に発信できる可能性を感じたのでしょうか、1学期と比べて飛躍的に成長したことを生徒自身も自覚し、さらに”専門的に学ぼうとする意識”が芽生えるようです(なかには大学や進路につながっていく生徒もいます)。

私自身もその生徒の”ブレークスルーのポイント”を理解し、さらに成長をサポートできるよう検討する、というホップステップで終わらない、さらにジャンプする(創造的に生きる)プロセスを作り出せることが、本授業のアクティブラーニング的な意味でも醍醐味となっています。

また、シュタイナー学園では、実体験や芸術教育重視で感性や感情などが豊富に蓄積されていることから、できる限り本人に宿る芸術的感性や実経験が活かせるよう、興味関心や違和感へのこだわりを充分に探究させ、クラスでもシェアしてもらう機会を大事にしています。そこから自分や他者への理解が生まれ、個人の「課題解決」に向かうプロセスにつながり、さらに社会の課題解決にまで思いを広げることができるようサポートしています。

言語、音楽、楽器、身体、絵画等の専門家は世の中に大勢います。しかし、それらを別の表現ツールで表せる(音楽⇆絵画⇆◯◯など)かどうか、その可能性として他の表現の経験が豊富かどうか、情報社会において今後これら表現ツールを横断的に活用できるか、そうしたことの重要性を様々なメディアのデザイン業務において痛切に感じています。シュタイナー学園の生徒には、それを解決する可能性を感じています。

ライター/教員 近清 武