2021.07.07
オイリュトミー授業のめざすところ― 1~2年生 ―
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.110 2021.7.7
シュタイナー教育では子どもの成長に合わせたカリキュラムを実践することが大切だと考えています。その学年の子どもが必要としていることを、必要なときに与え、子ども自らが体験することで心やからだの成長に必要な栄養となっていきます。シュタイナー教育の特徴的な教科のひとつであるオイリュトミーも例外ではありません。
オイリュトミーとは、音と言葉でからだの動きを表すシュタイナー独自の身体芸術です。シュタイナー学園では、1年生から12年生まですべての子どもたちがオイリュトミーを学んでいます。オイリュトミーにおいて学年ごとの大切な要素がどのように発展していくのかを授業の様子も交えながらお伝えします。
1年生
6歳ごろ、子どもたちは歯の生え変わりをむかえ、学校で学ぶ準備が整います。しかし、まだ幼さも残している模倣の時期です。模倣―真似をする力は世界を信頼する力であり、子どもたちは空想・ファンタジーの雰囲気(お話の世界)に包まれながら学ぶことが大切です。
オイリュトミーは子どもの呼吸のリズムに働きかけることから、オイリュトミーをすることで子どもたちの身体は健やかに育まれていくのです。
授業の様子をご紹介します。
春、ゴールデンウィークが終わる頃、1年生のオイリュトミーが始まります。色とりどりのドレスをまとい、その姿はまるで小さな妖精たち。ライアーというシュタイナー教育で用いる竪琴の優しい響きに導かれ先生の後ろからゆっくりと音楽室に入ってきて、綺麗な輪をつくります。みんなでひとつの美しい輪を作りながら、みんなとともにあること、全体が大切なひとつであることを体験していきます。
そして「光の手、光の足、光の柱」と先生が言いながら手足を揃え真っすぐに立つと、子どもたちは神妙な顔で同じように手足を揃え真っすぐに立ちます。その姿は“良いもの”に向かおうとする美しい姿です。これから12年間かけて子どもたちは自分のなかに“輝く光の柱”を育ててゆくでしょう。
手足を十分に動かし目覚めさせた後、笛の響きとともに先生の後ろについてファンタジーの森へと向かいます。空想の世界で小川を飛び越え、一本橋を渡り、野イチゴを摘んで、ぐるぐる渦巻きの迷路を抜けてさらに奥に進んでいくと、森の妖精のお話が聞こえてきます。今日のお話は『グリム童話』の「おいしいおかゆ」です。「グツグツグツグツ煮え続け美味しいおかゆの出来上がり」子どもたちは先生と一緒に大きなお鍋になったり小さなお鍋になったり…。
その後、再びグロッケンという小さな鉄琴で奏でられる星の歌を聞きながら、ゆったりとした静けさに包まれます。
このように1年生はすべてが空想・ファンタジーの雰囲気(お話の世界)のなかで授業が進んでゆくのです。
2年生
子どもたちはまだ模倣の力が残っていますが、少しずつ大人の意識へと目覚め始め、例えば右と左、善と悪などの二面性が現れてきます。そんな時期に『イソップ物語』の動物を通して賢さと愚かさという二面性を体験することで子どもたちの心の成長を促します。また、世界各地の聖人のお話や『ジャータカ物語』などを通して崇高な魂の雰囲気を体験することも大切です。
さらに、2年生になると友人との関係や他者への関心も生まれ、「私とあなた」というテーマでの練習が始まります。シュタイナーはこの「私とあなた」の練習は、自尊心を育て妬みの感情を良い方向に向ける練習であると言っています。「私とあなた」という関係を意識し、「私もあなたも同じ大切な存在である」という感覚を育んでいきます。
授業の様子をご紹介します。
手足を十分に動かし目覚めさせた後、森へ向かいます。森で出会うのは様々な動物たち。2年生の気持ちを表すときの友達は動物たちです。きつねやうさぎ、くまやりす。動物の名前をオイリュトミーの動きで表現すると、その動物の特徴がぴったりと現れ出てきます。こんこんこん、ぴょんぴょんぴょん…様々な詩のなかで子どもたちは生き生きと動き、全身でくまやりすになりきることを通して大きな呼吸と小さな呼吸を体験していきます 。
そして、今回のお話は聖人伝のなかから『聖ゲオルグ』。ゲオルグが人々を守るため命をかけて竜を退治するお話です。子どもたちはゲオルグや竜になりきって勇ましく動いていきます。子どもたちが大好きな課題です。ひとつだった輪がふたつに分かれゲオルグと竜になり交互に相手と廻りあう、また同時に廻りあうなど関係性がより複雑になってきます。
関係性を育む大切な課題として「私とあなた」の練習も始まります。2人ずつ組になり近づいたり離れたりしながら、お互いを感じ合う体験を重ねていきます。
次回は3〜4年生についてご紹介したいと思います。
ライター/教員 渡辺志保