学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2021.07.21

教育

オイリュトミー授業のめざすところ― 3・4年生 ―

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.111 2021.7.21

1~2年生についての記事はこちら

3年生

3年生では「古事記」などの神話を題材にしながらも、徐々に空想・ファンタジーの世界から離れ、意図された目的のある練習が始まります。子どもたちは新しいことに次々と挑戦していくことが大好きです。それは「もっと伸びていきたい!」という意志の表れでもあるのです。

「私」という個の意識(自我意識)が目覚めはじめ、シュタイナー教育で「9歳の危機」と呼ばれる時期に近づいていきます。それまで自分と一体であると感じていた世界が分離しはじめ、自分の内面と外の世界を分ける境界ができはじめるのです。そんな3年生にとって大切な課題は「交差の動き」です。

授業の様子をご紹介します。

1~2年生のオイリュトミーは優しい響きを奏でる楽器だけで行いますが、呼吸器が発達し、大人への意識がより目覚めてくる3年生からはピアノを導入します。初めは静かな響きからだんだんと躍動感のある響きに高まり、曲にあわせて動くことを子どもたちはとても楽しんでいます。「面白い!」という声が聞こえるのもこの頃です。

機敏さや集中力を養う練習も始まります。手足を使って様々にバリエーションを変えながら機敏に動き、身体をコントロールしていくことを学びます。

他者との関係性もより複雑になってくるので、2年生で練習した「私とあなた」を感じる課題をさらに発展させ人と交差する練習を行います。例えば全員で8の字を教室いっぱいに動く時の交差はとても難しい課題です。

お互いが自分の事だけ考えて動くとぶつかってしまう、しかし遠慮するだけでも上手くいかない、勇気をもって相手の間に入っていくことも必要です。初めはぶつかり合いながら、お互い動くなかで程よい距離感を発見していきます。それは人との距離を測る人間関係や社会性を育む基礎となり、「9歳の危機」を超えて行く勇気も育まれます。

4年生

4年生は「子ども時代の中核」とも呼ばれ、学ぶ意欲に溢れています。3年生まではみんな一緒に輪の内側を向いて動いていましたが、4年生になると輪が解かれ、それぞれが「身体は前を向いたまま前後左右に動く」練習が始まります。

前を向いたまま動く練習というのは 子ども達にとって新しい世界に歩みだすとも言えるほど大きな変化です。「私」という個の意識(自我意識)がさらに目覚めることで、ひとりで外の世界と向き合う準備が始まります。

物事を抽象的に捉える力も育っていることから、動きと文法を関連付けた学びが始まります。 例えば、蜂・花などの名詞や、走る・飛ぶなど動詞の言葉を使いながら、名詞や動詞の約束事を動きを通して学び始めます。

算数の授業で分数を習った後、オイリュトミーでも分数の考え方を取り入れた課題を行うことで、頭だけでなく全身で学びを体験していきます。

授業の様子をご紹介します。

3年生までは音楽室で練習していましたが、4年生からいよいよ 専用のオイリュトミー室にデビューします。子ども達は憧れを持ってホールに足を踏み入れますが、1ヵ月もすると大きな空間に慣れて動きものびのびとしてきます。そのころから前を向いたまま動く練習が始まります。

習得するには時間がかかりますが、まっすぐ前を見て歩く子どもたちは誇らしげです。前後、左右、8の字など様々な動きを集中して学びます。「もう1回やりたい!」と意欲的な声が上がるのもこの頃です。

言葉を動くオイリュトミーで、例えば金子みすゞの「蜂と神様」は、こんな言葉で始まります。「蜂はお花のなかに、お花はお庭のなかに、お庭は土塀のなかに…」この時はみんなで輪になり中心からだんだん大きく広がります。少しずつ外の世界に向かって広がる様子は4年生の時期にぴったりです。

詩の最後は 「…そうしてそうして神様は小さな蜂のなかに」という言葉で締めくくります。みんなで大きな輪から一気に小さな輪に集中していきます。その時、「自分の中心」を予感し始めたかのような静かな一瞬が訪れます。これから長い年月をかけて子ども達は「自分の内なる中心」を確かなものにしていくことでしょう。

次回は5~6年生についてご紹介したいと思います。

ライター/教員 渡辺志保