学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2021.11.24

教育

思春期に寄り添うオイリュトミー授業―7・8年生―

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.120 2021.11.24

シュタイナー教育の特徴的なカリキュラムのひとつ、「オイリュトミー」についてシリーズでご紹介しています。

1~2年生についての記事はこちら
3~4年生についての記事はこちら
5~6年生についての記事はこちら

7年生

子ども時代から若者の時代へと入っていきます。自分の内面がより深く育つと共に外の世界への興味も広がっていきます。感情が激しくなり“思春期”と呼ばれる時期です。子供達は論理的思考ができるようになってくると一時的にとても批判的になり、自己を主張するようになります。そんな時、教師は授業の仕方を変え、揺るぎない芯を持ちながらもユーモアを持って生徒の前に立つように努めます。

言葉の力をより必要とする時でもあるので、近・現代の詩から生徒の心に響くような詩を選び、“母音や子音の動き”を使い詩の内容をはっきりと表現するよう導きます。言葉のオイリュトミーは“自分から世界に対して語る”ことであり、しっかりとした“自分を立たせる力”を育てます。

また、論理的思考をさらに養うために、幾何学図形を空間のなかで、より複雑に展開して動く課題を行います。そして6年生から学んでいる「銅の棒」は引き続き行い、心身に働きかけていきます。その目的は“重さと軽さのバランスのなかに自分の足でしっかりと立ち、自分の動きをコントロールできるようになること”です。それができるようになると、銅の棒を扱うこともスムーズになり「7分節」、「12分節」など様々な練習方法を組み合わせひとつの作品として練習していくのです。

音楽オイリュトミーでは短調の曲を扱いますが、一方では対照的に軽快でユーモラスな曲も取り入れていきます。クラスの結束力もが強まっていく時なので、グループ全体で様々にフォルムを変えながらひとつの作品を創り上げます。生徒たちは軽快な曲で動きあい、笑いが起こることで場は和みリフレッシュするようです。

8年生

8年生は思春期を通り抜けていく時です。思春期とは“地上にしっかりと立つ力を身につける時”であり、“自分自身を内面から捉え始め、論理的思考ができるようになってくる時”です。

教師がユーモアの精神を忘れないのはもちろんのことですが、様々に疑問をぶつけてくる生徒に対して丁寧に論理的に説明することも大切になってきます。

授業の内容としては 7年生の内容をさらに発展させていきます。そしてより心の内面が育ってくる時期ですので、「さまざまな感情を動きとして表現する」ことを学びます。オイリュトミーでは「心の仕草」と呼ばれるものです。例えば共感や反感、希望や願望、強欲や祈りの気持ちなどの仕草を入れながら作品を創っていきます。

また、「銅の棒」では最終的な練習として、銅の棒を縦に保ちリズムよく「相手と投げ合い」ます。その時テーマとなるのは“いかに相手が取りやすいように届けるか”ということです。2人で投げ合う練習から始め、次に4人で、最終的には8人でリズムよく投げ合います。ピアノ曲に合わせて、7年生から積み上げてきた「7分節」や「12分節」「波の動き」など様々な課題を繋ぎ合わせて最後に「棒を投げ合う」場面で最高潮に達しフィナーレを迎えます。しっかりと地上に立ち、背骨をまっすぐに伸ばし、勢いよく相手の取りやすい所に棒を届ける。リズムとテンポを間違えると棒と棒がぶつかり合ってしまうので、かなりの集中力を必要とする課題です。

子ども達はその緊張感のある一連の流れを心から楽しみ、全員で力を合わせて作品を創り上げることで、どの生徒も充実感、達成感を味わっているような良い表情を浮かべます。

ライター/教員 渡辺志保