2022.02.16
高等部のオイリュトミー ― 9・10・11・12年生 ―
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.126 2022.2.16
シュタイナー教育の特徴的なカリキュラムのひとつ、「オイリュトミー」についてシリーズでご紹介しています。
1~2年生についての記事はこちら
3~4年生についての記事はこちら
5~6年生についての記事はこちら
7~8年生についての記事はこちら
高等部
9年生から12年生は、いままで取り組んできたことをより意識的に理解し、それらの知識を使いながら、作品の内実に迫り芸術作品を作り上げていきます。生徒の内面は光と影を兼ね備えた深みを増し、自分という”光の柱”の輝きに目覚め自覚的に自分を育てていく時期です。そして最終学年である12年生で”卒業オイリュトミー公演”を迎えるのです。クラス全員で創り上げる作品の他に、個人作品では自分で選んだ作品と格闘しながら表現することに情熱を傾けます。
9年生
高等部になり落ち着きを取り戻しつつも、未だ”思春期”の風をはらんでいます。9年生を一言で表すと”対極”という言葉で表現できるように外界に対し反発しながらも内的には強い関心を示し、ますます視野を広げようとしています。そして本質的なものを求め、知りたいと切望しています。オイリュトミーでも今まで習ってきた動きの要素が何を表しているのかを論理的に理解し、意識的に動きとして表現していくように導いていきます。例えば音楽オイリュトミーでは「和音」を取り上げ長調、短調、不協和音など三和音の”質の体験”を深め、動きとして表現することを目指していきます。このように9年生にとっては”質の体験”を大切にしています。
10年生
9年生の内面が”対極”であるとすると、10年生はその”対極の中に中庸を見出す時期”に入ります。右か左ではなくその中間があるということ、対立する意見の中から統合し自分の中から結論を見つけていくことができるようになります。それは生徒の内面に自分という中心が確かに育っている証です。オイリュトミーの課題としては、深みを増した自分の内面と向き合うように、人間の心の三要素である「思考・感情・意志」つまり「考えること・思うこと・行動すること」という”それぞれの動き方”を学んだ後に、ひとつの詩の本質を見極め、どの要素で表現するかを考察し、グループで話し合いながらフォルムを創り作品にしていきます。またルドルフ・シュタイナーが示唆した教育的な課題へ向かうことも始まります。例えば「ハレルヤ」「TIAOAIT」「Ich denke die rede」など”若者の精神的な視野を広げ心身を健やかに育てる”オイリュトミーならではの課題にも取り組んでいきます。
11年生
自分の中心への意識がより深く目覚めることで、”内面を見つめ、さらに未来への展望つまり自分の人生について考え始める時期”に入ります。自分は何に興味があり、どうなっていきたいのかを模索します。言葉のオイリュトミーでは、今まで学んだ「文法と動きの関係」や「内的な心のありようの表現方法」を駆使し芸術作品を創っていきます。例えば、宮沢賢治やニーチェのなど深い作品の内実に向かうことを目指します。音楽のオイリュトミーでは、バッハやベートーベンなどの古典や現代音楽、ポップスなど幅広い領域から相応しい作品を選び、グループでダイナミックに動きます。その際、生徒自身が弦楽器や管楽器を演奏することもあります。また自分で作品を選び個人作品への取り組みも行いながら、12年生での”卒業オイリュトミー公演”の準備も始まります。
12年生
これまでの12年間の学びの集大成として、自らの力で芸術作品に向かい合い、真理を追究していく時期です。個人としてまたはクラスの総力を結集し”卒業オイリュトミー公演”に向かいます。 作品を創り上げていく過程で様々な衝突や挫折を乗り越えながらも大きな目標に向かって行きます。どんなことがあってもあきらめず、卒業公演をやり終えた体験、そして真摯に芸術作品に向かい合った体験は、新しい世界に旅立つ彼らにとって”世界への信頼”そして”自分への信頼”を確かなものとし、未来へ進む力となることでしょう。
ライター/教員 渡辺志保