2017.10.30
12年間一貫教育の素晴らしさ ~カリキュラムツリー解説~ 「雨はなぜ降るのか?」
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.16 2017.10.30
中学生にこうきかれたら、私たちは迷うことなく「科学的」に答えようとするでしょう。でも、そこで知識を与えてしまうよりも、雲や雨ができる実験と観察をして、自分でその道理を見つけてもらうことができたら、子どもたちにとってはずっと生きた力になります。学校は、そんな道理を友だちと共に見つけていくかけがいのない場所だと言っていいかもしれません。そんな過程を経て、例えば雨の出来方ならば、「飽和水蒸気量」とか「放射冷却」と言った概念を学ぶでしょう。概念に生き生きとした意味を持たせるためには、やはり生き生きとした時間を過ごさなくてはなりません。ここにあげたカリキュラムツリーは、生きた概念に至る生きた時間を可視化したものと言ってもいいでしょう。
ここでは、例えば、子どもたちが観察をきちんとできるようになるのは何才くらいなのか、概念化ができるようになるのは何才くらいなのか、ということが考え抜かれています。このカリキュラムツリーに書かれていること全てが、子どもたちの成長に即した学びとなるよう考えられているのです。
「どうして雨は振るの?」
と問うたのが小学1年生だったら、私たちは、「科学的」な知識を教えるのでもなく、観察や実験もしません。どちらも小学1年生の健やかな成長と結びつくとは考えないからです。私たちは、小学1年生が生き生きとした絵姿を思い描けるような、ファンタジーに満ちた答え方をしようとするでしょう(どんなファンタジーになるかは、是非考えてみてくださいね)。
更に遡ると、「どうして雨は振るの?」という問いが生まれてくる(もちろん、全ての子どもがこの質問をするわけではありませんが)生活の基盤はご家庭が築いてくださるものです。雨の日のお散歩も楽しいものですが、大雨の時には危ないところに近づかない、外出するときはきちんと身支度をする。そんな生命の感覚に守られてこそ、安心して問いが生み出せる、と私たちは考えます。
根は安心して宇宙に繋がっている。
幹は真っ直ぐに立っている。
(曲がっている幹は曲がっているなりの真っ直ぐさで)
世界への関心に満たされて枝は腕を伸ばし、
そこに生き生きとした概念が生まれる=葉が茂る。
カリキュラムツリーを見ながら、そんな樹木の姿に子どもの成長を重ねてみていただけたら、と思います。その幹から蕾までの12年間を見守れる喜びと見守られる安心とが出会う場所がシュタイナー学校なのではないでしょうか。
そして、この樹には未来があります。成長に沿った学びを積み重ねることによって、その子が必要とする時に必ずその子らしい花を咲かせる力が培われている、という未来です。これを、私たちは「自由への教育」と呼んでいます。
シュタイナー学園高等部
柳澤玲一郎