2018.10.03
子どもの中に深く染み込む学び 8年生までの校外学習
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.44 2018.10.03
今回は、校外学習に内容を絞って、シュタイナー学園の学びをご紹介いたします。かつて私が8年生まで受け持ったクラスで行った、主な学校外での活動と学びについて振り返ってみました。
1〜2年生
低学年のときはよく学校から近い神社へとお弁当を持って出かけました。神社のお社にごあいさつをした後に広い草地が広がって見晴らしのよい境内で、鬼ごっこをしたり、お花摘みをしたりして、お昼にはお弁当を食べてくつろぎました。春にはフデリンドウが青紫の可愛らしい花を咲かせ、スミレやシロツメクサもたくさん咲いて、秋には紅葉が美しく色づき、公園のような神社で過ごす時間はとても楽しいひと時でした。広葉樹から落とされたどんぐりを袋いっぱいに取らせてもらったこともありました。(このどんぐりは算数の数の学びのときに大活躍しました。)1月には、春の七草をつみにこの境内に足を運んで、ちょうど雪が降った日のことでしたので、雪をかき分けてはハコベやナズナなどのロゼッタ(植物の冬越えの姿)をとって帰り、おかゆを作って食べた日のことなどが、思い出に残っています。
シュタイナー学園のある藤野という地域は山に囲まれている町で、少し歩くと、沢蟹の棲む川があり、夏の暑い時期にはサンダルを持って涼を求めて散策に行くクラスも多くあります。自分をとりまいている自然を通して、季節の移り変わりを全身で感じながら子どもたちは育っていきます。
3年生
前回のコラム(※)にもあったように、田んぼでのお米作りを行う3年生では、「仕事の学び」として、「鍛冶屋さん」をとりあげることがあります。実際に鍛冶屋さんに行って、どのような仕事を鍛冶屋さんがしているのかを学ばせてもらいます。コークスの赤い炎の中に鉄を入れて、柔らかくなった鉄をたたいて、冷やして、頑丈な道具を作り出していく、そんな職人さんの力強い動きを見る子どもたちの眼差しは真剣そのもの。帰りには「ぼくは将来鍛冶屋さんになりたい」という子どもが出るほどです。巧みな技の職人さんの仕事は人から人へと伝承されてきたものです。人間が生み出し伝承されてきた技術を実際に目の前にし、その仕事のすごさと面白さを直に感じ取ってくる体験となるのです。鍛冶屋さんから渡された贈り物の鎌は、一生の宝物となっていることでしょう。
また、この時期には林業実習も行いますが、藤野の山に入って、杉の木を切る様子を見学するだけでなく、伐採のお手伝いも安全な範囲で少しだけ体験をさせてもらいました。このときには「自分の山が一つほしい」という子どもがいて、実際の体験がどれだけ子どもの中に入り込むのか、改めて感じさせられるものとなりました。このときに伐採した木材を使って、4年生では家づくりが行われることになります。
4年生
4年生での学びの一つに「郷土学」があります。このとき、学校の周辺の藤野地域を歩いて、地図を作るということをします。歩いた道順や風景を思い出しながら作成していきますので大変難しいことなのですが、クラスにはこの地図づくりに才能を発揮してくれる子どもがいて、クラスのみんなを助けてくれました。地図を作成した後は藤野の歴史を学びます。藤野の古民家を訪れて、かつて藤野で盛んだった養蚕に適した家の作りや、ふすまや縁側、そして畳といった今の新しい家ではあまり見ることのなくなった昔ながらの家の造りを見学しました。その家に住んでいるおじいさんから、子どもの頃の話を聞かせてもらい、昔は川を船で渡って学校へ通ったこと、山道を歩いていたときに、誰かが後ろからついてくるんじゃないかと思っていると、道の上に落ちている枯葉が風でかさかさと鳴っている音であったことなど、興味深い話が語られるのでした。そんなふうに、藤野のまちや歴史について知っていくことで、この藤野の町をそれ以前よりもずっと親しく感じられるようになっていくのです。
5年生
子どもたちが外の学校のことが気になり始めるのが、5年生くらいでしょうか。いわゆる「公立」の小学校とは違う、しかも「シュタイナー」という名前のついている学校で、何が違うのだろう? という不安にも似た感情を抱くこともあるようです。そのときに、とてもよい校外学習となるのが、横浜や立川にあるシュタイナー学校との交流会です。私のクラスでは、ちょうどこの時期に横浜シュタイナー学園と一緒に愛川という町で交流の合宿を行いました。ともにスポーツをし、野外炊飯をし、キャンプファイヤーを楽しんでいくうちに、初めはお互いにはにかんでいたのが、とても仲の良い友だちとなっていきました。6年生ではこの仲間たちに立川の東京賢治シュタイナー学校の同学年の子どもたちも加わって、3校合同でオリンピック競技会を開きました。シュタイナー学校では5年生から古代の歴史を学びますが、ギリシャの歴史を学んだ後にこの競技会を行うのです。アテネやスパルタなどといったチームに分かれて、レスリングや短距離走、やり投げ、円盤投げなど古代のオリンピックで実際に行われていた5種目を競い合います。思いっきり力を出し合った後の子どもたちは、ともに戦いその後も手紙などでやり取りをする大切な友人を得た嬉しさと、心も体も心地よい達成感とで満たされているようでした。
7年生
「サバイバル」と呼ばれる野外活動にチャレンジするのが7年生です。なぜこの学年でそのようなことをするのでしょうか。それはイライラしたり、反発したりすることの多い、いわゆる思春期という精神的に難しい時期を乗り越える手助けとなるからではないかと思っています。クラスによってどこで何をするかは違っていて、本格的な沢登りや滝登りにチャレンジするクラス、1週間、水道もトイレもない森の中でキャンプをしながら過ごすクラスと様々です。
楽ではないこの野外活動ですが、どのクラスの子どもたちも、この校外学習を楽しかったと語り、自信につながるものを得ているように感じます。中には終日大雨に見舞われるクラスもありますが、そんな中での野外炊飯などの活動はどんな中でも協力して行うことの大切さ、あきらめないこと、楽しむことの大切さを学ぶ貴重な機会となります。
シュタイナー学園教師 加藤優子