2017.08.07
農という観点から見た体験授業
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.5 2017.08.07
シュタイナー学園は、今年30周年を迎えます。
7月26、27日に東京大学の農学部、弥生講堂をお借りして、「農から考える子どもの教育展」を開催しました。
シュタイナー学園では、米づくりや園芸、農業実習など、さまざまな「農」に関する教育的取り組みを行なっています。今回のイベントは、全て「農」というカテゴリーをテーマに、展示、体験授業、講演という形で一般公開。
例えば、国語の体験授業は、3年生で体験する米づくりの授業に関連し、米という漢字の成り立ちについて。1年生で初めて学ぶ漢字は3日間かけてじっくり学びますが、一つ一つの漢字が持つ背景には、たくさんの物語があります。
理科の体験授業は、5年生からはじまる「植物学」。シュタイナー学園の特徴である、座学だけではない、体を動かしながら学ぶエポック授業を丸ごと学べる体験でした。カエルになりきってリズムを楽しんだりしながら、芸術科目や幾何学を学び、人間の成長にも関連させながら、植物の生命を感じ取っていきます。
算数の体験授業は、3年生で学ぶ度量衡。今回の授業では、教室の壁を歩数や両手をを伸ばした幅ではかり、それから一尺定規でもはかってみる体験をしました。また、お米を両手で救った重さをはかる体験、一合のお米が本当に150gなのかをはかる体験も。一寸や一尺、一合や一升がどんな単位なのかをたくさんの雑学を交えながら学び、「はかる」歴史の元となった物々交換でどのように取引されたのかということに思いを馳せました。
どの参加者も目を輝かせ、生き生きと体を動かしながら学ぶ姿があり、見ている私にも感慨深いものが。大人でもこれだけ楽しめるのですから、シュタイナー学園に通う子どもたちが学びを「楽しい」と思う気持ちがよくわかりました。
植物画体験ワークショップ
植物観察ワークショプでは、絵が苦手な私も実際に体験させていただきました。地、水、風、火の四大元素を赤、黄、青の三原色であらわします。
水で濡らした画用紙に、光や熱、風、水をイメージしてそれぞれ黄色、赤、青の背景色を塗り、チューリップの球根、根、茎、葉、花の命を吹き込んでいくように、水彩画を描いていきます。
しっかり固まった土があるからこそ、植物は育つ。芽や茎、花、葉は、風に揺らぎながら光や熱を求めて、伸びる。そんなことをイメージしながら、球根から真っ直ぐ天に向かって枝を描き、下から伸びる力、上から照らされる光の力をイメージして下から上から筆を動かしました。
チューリップの葉は何枚?花言葉は?原産地は?チューリップからできる香水の名前は?なんていう雑学も交えながらあっという間に体験が終了。
自然と植物の力が混じり合い、色が作られていく様子を体験したことで、植物への見方が変わったような気がします。植物が自然からどんな力を得て成長するのかを本質的に学ぶことができるから、子どもたちの中にも植物への学びが根本的に入るのだろうと想像できました。
シュタイナー学園の農的教育を様々な角度から
3年生の教室そのままの雰囲気を感じられる、米づくりの展示のエポック授業の展示。先生の描いた「黒板画」や、子供達が教科書がわりに使う、自分で書いた「ノート」も展示され、1年生から12年生までの「農的教育」が具体的にわかる仕様となっていました。
講演会は、森章吾氏の「現象自体を読む新たな自然科学」 、丹羽敏雄氏の「植物の姿を読み解く ~木々と星々~」、井手芳弘氏の「世界に対する責任感を育てるには」と、農に関するシュタイナーの見解をわかりやすくお話ししていただきました。
足立久美子氏の「数学の手仕事」ワークショップでは、小さな子には「羊毛の手仕事」を、大人でも楽しめる、竹ひごで双曲放物面、折り紙で折る双曲放物面、紙テープでルートらせん、正五角形の切り絵など、教育で実践している教具を実際に体験。
シュタイナー学園教師によるパネルディスカッションもあり、農的な断面でシュタイナー教育を切り取っていきました。
2日では見きれないくらい、シュタイナー学園の学びがギュッと詰まった今回の教育展。生徒によるオープニングパフォーマンスの「民謡こきりこ」、クロージングパフォーマンスの生徒によるコーラスをご覧いただけた方には、シュタイナー学園の子の姿がきっと目に焼きついたことと思います。
たくさんの方にご来場いただき、東京大学という場でシュタイナー学園の農的学びを体験していただけたことに、とても大きな力を感じました。30周年という歴史を胸に刻み、子どもたちが芸術を取り入れた教育を受けられることに改めて感謝する気持ちでいっぱいです。
越野美樹 (4年保護者)